米国のワクチン施策の影響に注目

 先週末のドル/円は、米国株が堅調に推移し、ダウ、ナスダック、S& P500の主要3指数が史上最高値を更新するとドル/円も買われ、1ドル=110.60円近辺まで上昇しましたが、先々週の110.70円近辺には届きませんでした。結局、この2週間で109〜111円のレンジを確認しただけの動きでした。110円を挟んで上下に動くだけで方向感はありません。クロス円も激しく上下に動いていますが、5月、6月のような上昇力はなくなっています。

 米国はワクチン接種で世界に先行し、米国全土では18歳以上の70%近くが1回の接種を終えていますが、地域によって接種率に開きがあることが問題になってきています。東部バーモント州やマサチューセッツ州、それにハワイ州では80%を超えるような州がある一方、南部ミシシッピ州、ルイジアナ州、西部ワイオミング州などは50%以下となっています。いわゆるリベラルが多い民主党の地盤州では接種率が高く、保守層が多い共和党の地盤州では低い傾向になっています。

 そしてワクチン接種率が高い東部などの地域では新規感染や重症化を抑え込んでいる一方、相対的に低い中西部や南部では新規感染者の増加が鮮明になっています。

 こうした状況について、バイデン政権のファウチ首席医療顧問は、「米国は間違った方向に進んでいる」と、ワクチン接種の遅れている地域で感染が再拡大していることについて警鐘を鳴らしましたが、マーケットでは、この状況を無視するかのように米株は上昇し、景気に対しても楽観的な見方が多い状況です。

 しかし、感染増加が止まらず、接種率が伸び悩み、ワクチン効果の期限も注目されてくると事態が深刻になる可能性もあります。感染拡大が景気後退リスクを再び想起させ、相場へ影響を与えることになるかもしれないため、油断はできません。