中央銀行のMy Ever Changing Moods

The past is knowledge
The present is our mistake
And the future we always leave too late

 先週のマーケットが急に「リスクオフ(リスク回避)」に動いたのはなぜか?欧米の投資家の多くが、最近までコロナ変異株は、「大した問題ではない」と高を括っていたせいだと思います。ところが止まらぬ感染拡大を前にして見通しが甘かったことを悟り、コロナによる経済リスクを厳しめ目に再評価した。これがリスクオフの引き金になったのです。

 では、なぜドル高なのか?欧州におけるワクチン接種率は、十分といえるレベルに達する前にペースダウンが始まっています。このまま夏休みに突入すれば、秋の第4波襲来は避けらない。ドイツでさえ医療崩壊の危機がいわれている。大陸移動の人流抑制措置が再強化されることになった場合、欧州経済の再開がさらに遠のきます。

 一方で、米国は再ロックダウンの可能性はかなり低いと考えられています。ワクチン接種が完了した人口比割合を見ると、米国が欧州に比べて大きくリードしているわけではない。(米国49%、ドイツ48%、フランス46%、日本23%)。しかし、米国は、経済再開の判定基準を、コロナ感染者数(の減少)からワクチン接種率(の高さ)へと変更するという政治的決断を下した。同様の動きは他の国でも見られ、英国はリスク基準を感染者数ではなく入院患者数に変更しています。

 なぜこれが、マーケットにとって重要かというと、中央銀行の政策運営に大きくかかわってくるからです。ECB(欧州中央銀行)は先週行われた7月の会合で、政策のガイドラインを変更しました。その内容は、量的緩和は延長、少なくとも今後2年間は「利上げしない」。日銀の「ハト派原理主義」陣営に新たにECBが新たに仲間入りしました。

 一方、「極タカ派」には、8月にも利上げが予想されているRBNZ(NZ準備銀行)、量的緩和は必要ないと宣言したBoC(カナダ銀行)がいます。このグループにBOE(イングランド銀行)が参加するのではないかという憶測が強まっています。

 そして、大御所のFRB(米連邦準備制度理事会)は、タカ派、ハト派のどちらの陣営に入るのか。デルタ変異株はハト派に量的緩和続行の根拠を与えたという意見もありますが、国内インフレ上昇のリスクマネージメントには、緩和縮小が必要だという見方の方が優勢です。