I Still Haven’t Found What I’m Looking For

 この日の米10年債利回りは一時1.2%を下回り、1.17%付近まで低下しました。

 多くの投資家が2.0%目指して上昇すると予想していた米長期金利が低下した理由として、米国で急速に拡大するデルタ変異株ウイルスの感染拡大があります。米国では先月初めから 1日の新規感染者が ほぼ1万人で維持されてきましたが、7月になって約4.8万人へと急増する日も出てきています。

 コロナ感染再拡大による経済再開の遅れ、あるいは景気回復の尻すぼみ。がFRB(米連邦準備制度理事会)の金融正常化(引き締め)への転換を遅らせるとの見方が増えています。

 先週のパウエル議長の議会証言は、それほど弱気ではなかったと思います。原稿は事前に準備されていたのだから、直前の強いCPI(消費者物価指数)の結果を反映していなくても仕方ない。パウエル議長は、今月のFOMCで緩和縮小について討議すると明らかにしているので、その時に新しいデータを検討して政策方向を決定する考えです。ブラード・セントルイス連銀総裁は「緊急手段を終了する時期がきた」と主張しています。

 一般的に、景気回復局面における中央銀行の政策は、不況時よりも予測が難しくなります。米経済に対するFRBの強気見通しは、ワクチン普及によるコロナ感染抑制が前提条件になっています。ところが変異株ウイルスの拡大が止まらなければ、この前提が崩れてしまうおそれがある。それだけではなく、ワクチン普及で経済再開という、これまで世界が信じていた公式が、果たして正しかったのかという疑問も起きる。7月28日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されますが、緩和縮小が正式に発表される可能性は後退しました。