雇用統計だよおっ母さん 

 前回の雇用統計で雇用者の増加が予想を下回った理由は、需要というより供給の問題でした。労働力の供給不足の原因のひとつに、良すぎる失業給付金が指摘されています。失業してもらえる給付金が給料より高いのだから勤労意欲が低下するのは当然かもしれません。そこで一部の州が、失業給付金の上乗せ金額の減額を実施しました。するとその途端に求人サイトの閲覧数が5%もアップしたということです。ようやく働く気になったアメリカ人が、一斉に仕事に戻って来るのか。今後の雇用統計は注目です。

 給付金の終了は最も早い州で6月中旬なので、影響が現れるのは今回ではなく、来月発表の7月雇用統計からになりそうです。ただし、その時には雇用増が一気に200万人増のサプライズもありえます。そうなれば、FRBの緩和縮小期待が一気に強まることになるでしょう。

 5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は55.9万人増加。数字は悪くなかったのですが、2カ月連続で予想を下回る結果となりました。

 労働力の供給問題はなぜ発生しているのか?労働力人口が減っているわけではありません。これは全米の企業が経済活動をスイッチ・オンにして、同じタイミングで労働力を必要としたせいで起きているのです。

 米国では2020年1月に比べて就業者数が約900万人減少しました。しかし今年4月のデータによると、ほぼ同数の求人募集があった。労働者もいて仕事もあるのに雇用者数が伸びないのは、短期的な雇用のミスマッチの問題と考えられます。

 雇用市場は極端な売り手市場で、できるだけ自分を高く売ろうとしたり、より良い仕事を求めて転職を繰り返したりしている人が増えている。米国で4月に仕事を辞めた労働者の割合は、過去20年で最大の水準。失業給付金がたっぷりもらえるから、すぐに働かずにゆっくりと自分に合う仕事を探すこともできる。雇用のミスマッチを原因とした雇用者数低迷はもう少し続くことになるでしょう。

 しかし、仕事から離れる期間が長くなればなるほど、いったん流れが変わった時には堰を切ったように人々が雇用市場になだれ込み、雇用統計の雇用者が100万人どころか、月200万人に急増する上向きリスクも高まっています。

 雇用市場がタイトになれば、米経済はヒートアップする。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がいくら否定したところで、マーケットは利上げ前倒しを織り込み、米長期金利の急上昇を引き起こす可能性があります。