個人投資家はどうしたら良いか?
【1】株式の保有を小幅に調整する
景気が先行き悪化する可能性があると思った時に、少しだけキャッシュを増やすのは悪くないと思います。ただし、大幅にキャッシュを増やすべきではありません。景気予測は往々にして外れるからです。景気判断の市場コンセンサスにしたがってキャッシュを増やしたり減らしたりしていると、株を安値で売って、高値で買うことになりかねません。
値上がり分だけ売ってキャッシュにするという考えもあります。景気回復が続き、株が上昇してくると、時価ベースで見た株の保有額は増えています。時価で増えた範囲だけ利益を確定するという手もあります。こまめに何回にも分けて売っていくことができるならば、一回でやるのではなく、5回くらいに分けるべきです。時価ベースで増えた分だけ、何回にも分けて少しずつ売っていくのが良いです。
最初の売りは往々にして「早過ぎ」です。2回目、3回目も「やや早過ぎ」かもしれません。売っても売っても上がるので、売るのが嫌になって放っている内に、暴落が始まります。しまった売るのが遅かったと思って4回目・5回目は下がる中で売っていくと、後から振り返って、それが高値圏でのベストな売り方となります。
どこが天井か誰にもわかりません。天井で売ることはできません。天井圏で手探りでの売りは、5回くらいに分け、上昇過程だけでなく暴落が始まってから最後の残りを売ると考えながら売るのがベストです。
【2】ディープ・バリュー株、または、ハイ・グロース株に逃避
私が機関投資家の時やっていたのは、ディープ・バリュー株へ逃げるという方法でした。その頃はまだ本格的なIT成長時代に入っていなかったため、成長株に逃げると言う考えはあまりありませんでした。
ただ、今ならば、景気悪化の影響を受けにくいハイ・グロース(高成長)株に資金を傾けるのも有効だと思います。日本もITサービスの本格的成長期を迎えたからです。
IT関連の成長株は、世界がコロナショックで戦後最悪の景気悪化に苦しんでいる時でも、成長を続けていました。今は、東証マザーズなどに有望な成長株が増えていますので、真の成長株を見つけることができるならば、成長株へ投資するのも、有効な戦略だと思います。
まとめると、ディープ・バリューまたはハイ・グロースへ資金をシフトするのが有効だと思います。ディープ・バリューについては、このレポートの末尾で紹介しているバックナンバーを参照してください。
あるいは、ITサービスの成長株に投資していくのも、今はおもしろいと思います。
【3】ディフェンシブ株へのローテーション
景気敏感株を減らすという戦略もあります。私は時期尚早と思いますが、私の判断が正しいとは限りません。米景気過熱→失速のリスクが高いと思う方は、景気敏感株→ディフェンシブ株のローテーションを始めても良いと思います。
高配当利回り株にも、景気敏感株とディフェンシブ株があります。たとえば、景気敏感株のトヨタ自動車(7203)を売って、景気変動の影響を受けにくいNTT(9432)に乗り換えるというのも一法です。
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