現在の物価上昇は「一過性」なのか?

「先日、リチャード・H・クラリダFRB(米連邦準備制度理事会)副議長の会見を偶然目にした。たった1分強しかない会見でクラリダは準備された原稿を棒読みし、FRBの連中が全員そういうように決められている文言をそのまま繰り返していた。つまり、現在の価格上昇は“一過性”であるという(おそらく主にコモディティ価格のことを指しているのであろう。株価指数ではない)。ハト派かつ低能という意味で、クラリダはパウエル=イエレン組にぴったりの仲間だ」と述べたのは、著名投資家のマーク・ファーバーだ。

「現在の物価上昇は一過性だ」というキャンペーンを米国の金融当局が展開している。この先も、金融当局による異例の緩和策に慣れたウォール街や議会などをその状態から引きはがすのは容易でないだろう。

 バイデン政権による追加の、かつ大胆な支援策によって、家計収入全体に占める政府給付金の割合は過去最高となる34%まで上昇した。言い換えれば、現在、米国の世帯収入の3分の1は国からの給付によるものだ。

 以下は40年前に亡くなった中国の毛沢東が現代に現れたというジョークである。

毛:「人民は十分に食べ物があるか?」
答え:「食べすぎて減量が必要です」

毛:「まだ(中国に、毛が敵視した)資本主義の奴らが残っているか?」
答え:「彼らは世界で事業展開するため海外に行ってしまいました」

毛:「中国は、英国より多くの鉄鋼を生産できるようになったか?」
答え:「(中国最大の)唐山製鉄所だけでも、英国どころか米国全体より多くの鉄鋼を生産しております」 

毛:「中国は社会帝国主義(=ソ連)を打ち負かしたか?」
答え:「彼らは自滅してしまいました」

毛:「中国は帝国主義を打ち負かしたか?」
答え:「今や中国自身が帝国主義者です」 

毛:「私がやった文化大革命はどうなった?」
答え:「今では米国がやっております」

 米国ではインフレに言及する企業の数が急増しており、インフレはすぐそこにまで迫っている可能性が高い。だが、米国の利上げは簡単ではないだろう。成長のための資金を負債に依存していることを考えると、金利の上昇は本質的に破壊的であるからだ。

 現在、米国経済は1ドルの経済成長を製造するために7ドルを超える負債を必要としている。米国の財務省・企業・家計は膨大な債務残高を抱えている。

 “物価のインフレ”はたいしたことはないが、株や不動産の市場は空前のバブルに沸いている。“金融インフレ”に積極的に関与するシステムは、つまるところ破綻する。インフレ期には実質賃金が減少して大衆の生活水準が落ちてしまうからだ。

 エリートたちは市民の不満を補助金や配給によってなだめなければならない。それらが尽きれば、もはや不満分子を監視し、人々を弾圧するしかなくなる。