3:西側諸国に対する分裂工作
三つ目に、中国としてG7を一枚岩でとらえず、対西側分裂工作を図っているという点です。
以前も、中国がG7メンバーであり、今年G20の議長を務めるイタリアを取り込もうとしている現状をレポートしました。今回、サミット終了後の記者会見で、フランスのマクロン大統領が、「G7は中国を敵視する集まりではない」という発言をしましたが、中国の官製メディアはこの発言を大々的に報じていました。
中国としては、昨今、G7、NATO、QUAD(米、日、豪、印)など、重層的対中包囲網が形成されている情勢下、悪いのはあくまでも米国であるのだという、ナラティブ(物語)を作ろうとしています。6月15日、定例記者会見を開いた中国外交部の趙立堅(ジャオ・リージェン)報道官は、「米国は病気だ。軽くない。G7は米国の脈を測り、薬を出すのがいいだろう」と皮肉っています。
また、NATO会議を受けて、中国はEU(欧州連合)を全面的・戦略的パートナーシップだと見なしていて、「米国がイデオロギーを対立軸に、中国に対して小サークルで対抗しようとしているが、中国と欧州は多極化世界における2つの重要な力量を代表している。我々はEUが不断に戦略的自主性を増強し、他国の誤った対中政策に拉致されないと信じている」と、欧州と米国と分裂工作を図っています。「他国」が米国を指すのは言うまでもありません。
このように見てくると、中国の米国に対する不信感は強まっていて、経済や気候変動といった一部分野での対話や協力はあっても(実際に、財務、商務の閣僚対話は進んでいる)、外交関係が根本的に改善する可能性は低いです。
ただ、中国としても、米国が原因で、欧州や日本を含めた西側諸国との関係が全面的に悪化することは望んでおらず、特に共産党百周年記念期間にある昨今、できる限り穏便に対外関係を管理し、安定的な経済政策につなげようとするでしょう。