中国がG7サミットに「抑え気味」に反応した理由

 ここからは中国の反応について検証していきます。

 G7サミットを経て、西側と中国との関係がどれだけ緊張、悪化するのか。マーケットへの影響を計る上でも重要な作業になります。

 中国の反応を3つの側面から分析していきたいと思います。

1:首脳宣言内容は想定内

 一つ目に、首脳宣言の内容や言及は、中国共産党指導部にとっては「想定内」だったという点です。私もサミットの前後、党や政府の政策立案者らと議論しましたが、彼らは総じて、台湾への言及、中国への名指しなどは必至と予測していました。

 サミット直後に、中国駐英国大使館の報道官が、中国を侮辱する内政干渉であるとし、「強烈な不満と断固たる反対」を表明しましたが、逆に言えばその程度の反応でした。

 中国が端午の節句で3連休だったという事情もあったのでしょうが、新華社や人民日報といった官製メディアが、対G7、西側ネガティブキャンペーンを大々的に展開するといった様相も見られませんでした。

2:最重要政治イベント前の安全運転

 二つ目が、中国の「抑え気味」の反応が、共産党結党百周年記念式典(7月1日)前夜というタイミングに関係している点です。

 この政治の季節、習近平(シー・ジンピン)総書記にとっては、安全運転が絶対的に重要であり、党内で目立った政敵が見られない現状下、最も警戒すべきなのが失策です。

 この意味で、G7諸国が中国の人権や海洋政策を警戒している、これらの問題をめぐって、中国と西側諸国との関係が劇的に悪化しているという印象を、14億の人民に持たれたくない。故に、“外交辞令”で抗議や不満を示しつつも、物事を穏便に済ませたい。また、コロナ禍の経済を安定的に運行させるために、引き続き外資を積極誘致するという意味でも、中国が国際的に孤立しているという印象を与えたくないのでしょう。