もう一歩先にすすめる投資

 読者の将来の人生におけるお金の有用性・必要性を考えると、投資を、今回のボーナスの10万円だけでおしまいにするのは、いかにももったいない。

 10万円から投資を始めて、その後に、少しずつでも投資を拡大していって欲しい。

 冒頭に述べたように、投資の方法は、お金持ちもそうでない人も、また年齢が若くても高齢でも、基本的には同じで良いので、追加投資は同様な物を対象として考えて良い。

 ただし、運用を行う上では、税制面でのメリットを活かせるだけいかす方がいいので、iDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISAなどを最大限に活用することを考えてほしい。

 また、投資は奥行きのある一生の「趣味」になり得る。趣味としての投資にあって、筆者が第一に推すのは、個別株に投資することだ。ただし、余裕を持ってリスクを見積もった上で、はじめから業種の異なる3銘柄以上の銘柄に分散投資するようなスタイルでデビューして欲しい。1銘柄にこだわるやり方で株式投資をはじめると、適切な方法と考え方に辿り着くのに時間が掛かる。

 筆者が個人的に思うに、趣味として、個別株に自分で投資することは、他人が運用するアクティブファンドに投資することよりも「遙かに」楽しい。余裕と興味のある方は、ぜひ試してみて欲しい。

【コメント】

 自分が書いた過去記事を読み返すと、ごく稀にだが、「いいことを書いているなあ!」と自分で感心する事がある。この記事は、当時、「10万円からできる初心者の投資」について書いて欲しいという編集サイドのリクエストに応じて書いたものだが、書きながら思いついた「人によって異なるかも知れないという留保条件付きだが、20代なら、10万円を持って大型書店に行って、「ためになりそうな本」をまとめ買いして、次のボーナスまでに読むと決意することだろう」という提案が、我ながら素晴らしい。証券会社の社員として不適切な発言かも知れないが、10万円位を投資してもせいぜい「経験」くらいしか得るものはない。しかし、10万円分の集中読書の効果は圧倒的だろう。「20代」でなくてもお勧めしたい。「自分への投資」の効果こそが圧倒的だ。もちろん、それ以外のお金を資本市場に投資する事は有効なのだが。(2021年5月30日 山崎元)