日本株の今後、2つのポイント

 では、今週の日本株が順調に値を伸ばしていけるのかについても考えていきたいと思いますが、いくつかのポイントがあります。

 最初のポイントは、「日経平均とTOPIXの温度感の違い」です。

 ここ最近のチャートを見ると、日経平均よりもTOPIXの方が強くなっている印象ですが、先週末4日(金)時点の予想PER(株価収益率)は、日経平均で14.24倍、TOPIXで16.37倍となっており、実は上値が重たい日経平均のPERの方が割安であるように見えます。

 普通に考えれば、「日経平均の上値余地がまだまだあるのでは?」となるのですが、実は、日経平均の指数寄与度の高いソフトバンクグループの利益が反映されている面があり、PERが低く見えていることに注意する必要があります。

 今の日経平均が割安かどうかはPERで見た限りでは微妙で、TOPIXのPERの方を参考にした方が良いかもしれません。

 次のポイントは、先週末に発表された「米5月雇用統計の反応」です。

 その結果を受けた米株市場は上昇しているため、初期反応は良好と言えます。株価指数はそれぞれ、NYダウ平均株価が0.52%高、S&P500が0.88%高、NASDAQが1.47%高となっていて、NASDAQが大きく上昇しています。

 具体的な米5月雇用統計の結果を見ていくと、非農業部門雇用者数が55.9万人増と前回改定値(27.8万人増)からかなり改善したものの、市場予想(65万人増)を下回ったほか、失業率は5.8%と、前回(6.1%)から改善しました。

 つまり、「全体的な雇用情勢は良くなっているが、予想ほど強くはないため、米金融緩和の縮小懸念が後退した」と受け止められ、米長期金利も低下していきました。

 米国経済の強さによってもたらされる長期金利の上昇は、PERの面で割高となるIT・ハイテク関連銘柄が売られやすくなる一方で、景気敏感株や金融株が買われやすくなり、株価指数では「NASDAQが売られ、NYダウやS&P500は比較的堅調」という構図になる場面が増えていましたが、今回の雇用統計の結果を受けて、IT・ハイテク株を中心とした高PERの銘柄も買い戻されてNASDAQの上昇が大きくなったと思われます。

 最近の日本株市場では、日経平均がNASDAQに近い動き、TOPIXがNYダウやS&P500に近い動きをすることが多かったため、今週のあたまはTOPIXよりも日経平均の方が強い動きを見せる可能性があります。

 続いてのポイントは、「1カ月前の記憶の再来」です。

 今週の10日(木)に、米国で5月CPI(消費者物価指数)の公表が予定されているのですが、ちょうど1カ月前に公表された前回(4月)分の米CPIが予想以上に強い結果となったことで米長期金利が上昇し、米金融緩和の縮小が懸念されて、日米の株式市場が急落する場面がありました。

 つまり、先ほどの米5月雇用統計後の反応と逆の動きに戻ってしまい、「今回のCPIの結果次第では同様の展開にならないか?」という思惑が働きやすくなりそうです。

 前回のレポートでも指摘した通り、現在の米国株市場は高値圏で推移していて、相場自体は崩れてはいませんが、物価上昇による米長期金利上昇と経済への悪影響、リスクマネーの行き先となっているビットコインなどの仮想通貨市場の乱高下、「Meme(ミーム)」株と呼ばれる一部銘柄の投機的な動きなど、不安定さは徐々に増していて、思わぬ株価の調整局面の到来には備えておく必要があります。

 日本株は出遅れ修正で株価上昇への期待が高まりそうな地合いですが、こうした米国市場のムードに左右されやすくなっている点には注意が必要です。ちなみに、今週の国内市場はメジャーSQのほか、4-6月期の法人企業景気予測調査なども予定されています。

 こうしたイベントを通じて相場に対する従来の見方に変化が生じるかが注目される週となりそうです。