暗号資産市場でミンスキーモーメントが発生

 暗号資産(クリプトカレンシー)が急落し、19日の市場は混乱に見舞われた。大規模ロスカットが発生。パニック相場で各国の大手取引所のサービスの一部がダウンやまたは接続障害に見舞われた。

 この暗号資産の急落は典型的なミンスキーモーメント(信用循環または景気循環において、投資家が投機によって生じた債務スパイラルによりキャッシュフロー問題を抱えるポイント)と言えるだろう。

 投機的行動がピークに達すると、レバレッジは逆回転を始めるダークサイドを持つ。ある時点で、投資家心理が市場の流動性に関連するレバレッジと衝突するミンスキーモーメントだ。

 マクロ流動性はブームとバブルをあおっている。だが、市場の非流動性が、究極的には暴落と崩壊の引き金を引くことになる。

2022年末までジャブジャブ!?世界のGDP(国内総生産)の0.7%にあたる流動性が毎月追加されている

出所:ゼロヘッジ

 最近はイーロン・マスクのツイッター発言によってビットコインの価格が乱高下している。イーロン・マスク率いるテスラが、保有するビットコインを売却する可能性があるか、売却したことがツイッターで示唆されると、ビットコインの価格は急落した。

 テスラ車の購入においてビットコインによる支払いを受け入れないことを表明したり、人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演し、冗談交じりにドージコインを「詐欺」と呼んだり、イーロン・マスクのツイートや発言によって暗号資産市場が右往左往している。

 暗号資産市場を動かす影響力を持ったイーロン・マスクのツイートは本気か冗談かわからないものも多いが、暗号資産の相場操縦者のような存在になっている。

ビットコイン/ドル(日足)

出所:石原順

ドージコイン/ドル(日足)

出所:石原順

 ビットコインによるテスラ車の購入をストップした理由について、マスク氏は「マイニングと決済のための化石燃料、特に石炭の使用が急増していること」を指摘した。

 そもそも、地球環境への負荷を減らし、持続可能なエネルギー社会への移行を加速させることを目的とする企業であるテスラが、採掘するのに多大なエネルギーを必要とするビットコインに投資を行なっていることについての整合性には疑問が残っていた。

 一方、暗号資産に対して強気の姿勢を示していたダブルラインキャピタルのジェフリー・ガンドラックは、ビットコインに関して心変わりをしたようだ。

 過去にビットコインが低水準で取引されていたとき、ガンドラックは暗号資産に対して強気の姿勢を示していた。

 しかし、「突然1万5,000ドルを突破し、突然2万3,000ドルになった。それが、今では2倍になっている。明らかに上昇が早すぎてニュートラルになった」、「1999年に収益もないのに市場に出てきて大成功を収めたドットコム・バブルの時代のようだ。それはまさに暗号資産だと思う」と、暗号資産のバブル(デジタル・チューリップ化)に警鐘を鳴らしている。

 莫大(ばくだい)な電力を使用するビットコインでテスラを購入することはできないが、イーロン・マスクの言っていることが本当であれば、そのビットコインをテスラは依然として大量に保有している。

 テスラは2021年第1四半期に、保有するビットコイン15億ドル分のうち、2億7,200万ドル相当を売却して1億100万ドルの収益を上げた。まだ12億ドルほどのビットコインを保有しているとすれば、ビットコインの価格動向によって、テスラの業績に影響を与えることになる。

ビットコイン/ドル(黒)とテスラ(赤)の日足の推移

出所:石原順