「red hot」の状態にある米経済、高まるインフレ懸念

 今月1日、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイの2021年次株主総会がオンラインで開催された。昨年、新型コロナウイルスによる移動制限のために出席できなかったチャーリー・マンガー副会長も参加し、総会の目玉であるバフェット氏とマンガー氏の掛け合いが2年ぶりに復活した。

 年齢についてことさら取り上げるのは野暮であるが、バフェット氏90歳、マンガー氏97歳である。3時間半に及ぶQ&Aセッションを含め、総会は6時間近くに及んだ。例年のことながらコーラを飲みつつ、休憩なしのぶっ続けで総会を終えた2人のバイタリティには脱帽する。

 SPAC(特別買収目的会社)の急増やロビンフッドを舞台にした個人投資家の投機的な売買、シェブロン株への投資、暗号資産などについて、それぞれの持論を展開した。また、アップル株の持ち分の一部を売却した判断については「間違いだったかもしれない」と述べるなど、広いテーマを網羅しており、今年の年次総会も「投資家のためのウッドストック」と呼ばれるにふさわしいものであったと言えるだろう。

 注目すべき点はインフレに関しての見解だ。バフェット氏は、ワクチン接種の進展で経済の正常化が進み始めた米国景気の先行きについて、「経済の85%はかなり高いギアで走っている」と指摘、米国経済が置かれている状況については「red hot」と表現した。

 バークシャーの傘下にある住宅建設会社の話を例にとり、「かなりのインフレの兆候が見られる。とても興味深いが、われわれは価格を上げているし、人々もわれわれに対して価格を上げている。そして、それは受け入れられている。コストは上がる一方だ。鉄鋼のコストも毎日のように上がっている」と述べた。

 そして「それは止まらない」と付け加えた。なぜなら、「人々はポケットにお金を持っていて、彼らはより高い価格を支払うだろう。6カ月前かそこらに予想したより多くのインフレが起こっている。」と。

収入全体に占める政府給付金の割合は急上昇している

出所:ゼロヘッジ

 実際、バイデン政権による追加の、かつ大胆な支援策によって、家計収入全体に占める政府給付金の割合は過去最高となる34%まで上昇した。言い換えれば、現在、米国の世帯収入の3分の1は国からの給付によるものだということになる。一方、収支報告においてインフレに言及する企業の数が急増しており、インフレはすぐそこにまで迫っている可能性が高い。

企業の収支報告でインフレについて言及する企業数(紺)とCPI(ブルー)

出所:ゼロヘッジ

米国の全ガス価格(黒:左目盛)とPCI(食品とエネルギーを除く 赤:右目盛)

出所:セントルイス連銀

 足元ではエネルギー価格が急上昇している。エネルギー価格の動きとCPIの相関から見ると、今後CPIが大幅に上昇することも想定される。

 日本の民主党政権時代を思い起こして欲しい。東日本大震災が発生した不運も重なり、経済は最悪の状態、厳しいデフレ環境に置かれていた。そうした中、為替は1ドル70円台まで下落し、日本はかつてない通貨高に見舞われた。デフレが通貨高を引き起こすとすれば、その逆のインフレは通貨安を招く。今後、為替市場を見る上で、米国におけるインフレの影響を考えておかなければならないだろう。