暴落はいつどのように起こるか

 相場の暴落がいつ起こるかは、積もった雪がいつなだれを起こすかと同様、ピンポイント予想する術がありません。しかし、山(市場)の積雪(ポジション、含み益)が多すぎるという内部条件、気温(長期金利)が上がって水を含んだ雪(ポジション)が重くなるなど外部条件の変化から、ある程度のリスク判断はできます。金融緩和が「収束」に向かう以上、相応の下落リスクに備えるのが妥当でしょう。

 一方で、深刻な暴落が回避、阻止され得る条件も想起できるでしょう。2021年2~3月のようなポジション調整が度々起これば、潜在的な相場下落圧力も小さくできます。度々の相場の自律調整、あるいは、政策当局が過熱相場に対してタカ派発言や長期金利上昇の放置などでけん制するケースも想定されます。

 逆に、当局が相場の危急時には金融緩和拡充など措置を講じるとする「政策プット」を市場が信認することで、相場の延命、下落抑制の効果があり得ます。ただし、この種の信認は早すぎたり強すぎたりすると相場を過熱させ、かえって後の暴落リスクを高める恐れがあります。当局は現実には、相場の過熱も暴落もさせないよう、是々非々の舵取りに腐心すると見ています。

 筆者は、相場の変調の兆しを探って、自ら判断し対応するDIY(Do It Yourself)投資家の育成に努めています。他方、長期分散投資など「相場に頭を悩ませない派」の方もいるでしょう。2021年は、DIYの人のみならず、「悩まない派」の人もぜひ、自らの投資ポートフォリオに相場リスクを具体的に落とし込んで考えるのに、格好のステージと考えます。

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