Born To Be Wild

 ECBは「タカ派」、FRBは「ハト派」。しかし、最近の経済指標の強さを目の当たりにして、パウエル議長がいくら否定しようとも、マーケットはFRB緩和縮小の検討時期は近づいていると思っています。

 バイデン大統領は今月、「米国における一世代に一度の投資」と銘打って、2.25兆ドル(約247兆円)規模の大インフラ投資計画を発表しました。1950年代の州間高速道路システムの建設以来、過去70年間で最大規模の計画。イエレン財務長官は、米経済のために「大胆に行動する(Act Big)」が必要だと宣言。

 このインフラ投資は、橋や道路の建設といった「オールド・エコノミー」だけではなく、水道管交換や高速ブロードバンドなどの整備に6,500億ドル(約71兆円)、人工知能(AI)など研究開発投資には防衛関連以外としては過去最大1,800億ドル(約20兆円)を見込んでいます。また「中国に対抗するために不可欠だ」として半導体のサプライチェーン(供給網)強化にも取り組む予定。

 1.9兆ドルの大型景気刺激策を成立させたばかりのバイデン大統領は、ワイルドに行こうぜ!と休む間もなくインフラ整備と気候変動対策に2.25兆ドルを投資すると発表しました。

 1.9兆ドルの財源については米国債発行で賄うのですが、イエレン財務長官は「増税ではなく、速やかな経済成長によって」財政赤字は減らすことは可能と述べています。しかし、さすがに2.25兆ドルについては、法人税増税がセットになるようです。また支出は約8年間に渡って行われるため、即効的な成長効果は期待できません。その意味でこのインフラ投資は、景気刺激策というより資産の再配分と考えるべきかもしれません。

 法人税増税計画にともない、イエレン財務長官は、世界の法人税率引き下げ競争に終止符を打ち、世界的な「最低税率」を設定することで合意するよう働きかけています。米国企業が税率の低い国へ本社を移転することを阻止する手段ともいえます。自分の都合に合わせて世界の基準を変えさせるのがアメリカの実力です。