パネル・ディスカッションの要点

 IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は、世界の景気回復は予想を上回っているとした上で、新型コロナウイルスの変異には十分気を付ける必要があると、警鐘を鳴らしました。

 特に中国、米国などの一部の国の景気回復が進む一方で、他の国、とりわけ観光への依存度の高い国の回復は遅れていることを指摘しました。各国間での景気回復の足並みがだんだん乱れてきていることに注意を払う必要があると強調しました。

 それらの国が回復するためには新型コロナワクチンが行き渡ることが必須であり、ワクチン政策は経済政策そのものであると主張しました。

 さらに、今後雇用市場が回復する過程で、すべての雇用が今まで通りのセクターで発生するのではなく、コロナ後は新しいセクターが失われた雇用の一部を引き受ける必要があると指摘しました。

 具体的には環境関連産業がサービス業などで永久に失われた雇用を埋め合わせることが望まれ、そのために労働者の再教育などに力を入れてゆく必要があると主張しました。

 ユーロ圏財務相会合のパスカル・ドナフー議長は、欧州におけるワクチン投与が遅延していることに関し、夏頃までには当初目標に追いついていくことは可能であるとし、究極的にはユーロ圏の中の15カ所のワクチン製造工場が10億回分を生産することも可能であると述べました。

 WTO(世界貿易機関)のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は、新興国は財政出動の余地が先進国より小さいので、大きな景気刺激策を繰り出すことが困難だったことを説明した上で、ワクチン投与が米国など一部の国ではかどるだけでは不十分で、世界にワクチンが行き渡らない限り、新型コロナウイルスを根絶することはできないと指摘しました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は、米国の低所得者層の失業率は今日でも20%であり、この人たちを支援するためには当面、現在の緩和的な金利政策を堅持する必要があると述べました。

ワクチンが国家の経済格差を広げる懸念

 今、世界の経済は当初予想より力強く回復の途上にあります。しかしワクチン投与がはかどっている国とそうでない国の間の格差は広がっており、ゆくゆくはそれが経済成長の差に表れることが懸念されています。