毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄

東京エレクトロン(8035)SCREEN ホールディングス(7735)ディスコ(6146)アドバンテスト(6857)ローム(6963)

2017年9月の日本製半導体製造装置販売高は前年比19.9%増、前月比2.0%減

 10月19日、日本半導体製造装置協会は、2017年9月の日本製半導体製造装置販売高(3カ月移動平均)を公表しました。それによれば、9月の販売高は前年比19.9%増、前月比2.0%減の1,589億2,900万円となりました。8月に比べると減収になり、前年比も6月の53.6%増をピークとして大きく鈍化しました。表1を見ると、6月以降高水準ながら横ばい圏に入っていると思われます。

 ただし、今上期は半導体設備投資の中心がNAND型フラッシュメモリに偏っていた模様であり、これを考えると、高水準で堅調な状態が続いていると言えます。

 今後のポイントは、今上期に停滞していたロジック半導体(スマートフォン、パソコンのCPUなど)の設備投資が今下期に回復するかどうかです。10月23日の週から2018年3月期2Q(2017年7-9月期)決算の発表が始まります。主な半導体関連銘柄の決算発表日は以下の通りです。この中で、半導体設備投資に関しては、東京エレクトロン、SCREEN ホールディングス、ディスコ、アドバンテストの各社が今下期をどう見ているかが注目されます。

主要な半導体関連企業の2018年3月期2Q決算発表予定日

2017年10月25日(水) アドバンテスト

10月27日(金) 信越化学工業

10月30日(月) レーザーテック(6月決算)

10月31日(火) 東京エレクトロン、SCREEN ホールディングス、ソニー

11月1日(水)  ローム

11月2日(木)  ルネサス エレクトロニクス

11月6日(月)  ディスコ

11月9日(木)  東芝、SUMCO(12月決算)

グラフ1 日本製半導体製造装置の販売額(3カ月移動平均)

単位:百万円
出所:日本半導体製造装置協会より楽天証券作成

表1 日本製半導体製造装置の受注高と販売高(3カ月移動平均)

単位:百万円、%
出所:日本半導体製造装置協会より楽天証券作成
注:2017年4月より受注高とBBレシオを公表しなくなった

 

半導体デバイス市場は引き続き好調

 これは半導体設備投資に対する現時点での私の見解ですが、今上期に停滞していたロジック半導体向け設備投資は今下期から再び活発になると思われます。高水準のNAND投資と合わせて、日本製半導体製造装置販売高は前年比20%以上の成長が予想されます。

 こう考える第1の理由は、半導体の主な需要分野、スマートフォン、データセンター(のサーバー)、パソコンとタブレットPC、自動車、ファクトリーオートメーション、ゲームなど、いずれの分野も大きな変調がないこと、そのため、半導体デバイス市場が順調に拡大していることです。今回の半導体ブームでは、半導体が装着されるスマートフォンや自動車などの数量増加に加えて、1台当たり半導体装着個数の増加が大きく寄与しています。それだけに今回の半導体ブームは持続的と思われます。

 グラフ2は世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)であり、表2はその実数と前年比です。8月までは順調に伸びており、前年比、前月比ともに増収が続いています。前述の需要分野が腰折れない限り、順調な伸びが続くと思われます。数量面での需要が伸びているだけでなく、市況も堅調です(グラフ3~5)。

 需要と出荷が順調に伸びている限り、短期的に横ばい圏に入っていると思われる半導体設備投資は、いずれ増勢を取り戻すと思われます。

グラフ2 世界の半導体出荷額(3カ月移動平均) 

単位:1,000ドル
注:2015年3月から「アジア太平洋・その他」から「中国」を分離
出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券作成

表2 世界の半導体出荷金額(出荷向け先別、3カ月移動平均)

単位:100万ドル
出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券作成

グラフ3 NAND型フラッシュメモリの市況(2017年5月22日まで)

単位:ドル、多値品
出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ4 NAND型フラッシュメモリの市況(2017年5月29日から)

単位:ドル、TLC(注:2017年5月30日付で従来の多値品がTLCに変更された)
出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ5 DRAMの市況

単位:ドル、4ギガビット(DDR3)
出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

 

TSMCの2017年12月期3Q(7-9月期)は10ナノが急拡大

 半導体設備投資が再び上向くと考えるもう1つの理由は、世界最大の半導体受託製造業者であるTSMC(台湾)の2017年12月期3Q(2017年7-9月期)決算の中にあります。

 TSMCの2017年12月期3Qは、売上高2,521億700万台湾ドル(83億2,400万USドル、前年比3.2%減、1ドル=30.3台湾ドル)、営業利益980億5,600万台湾ドル(32億3,800万USドル、同7.7%減)と振るいませんでした。8、9月の月次売上高を見ても(グラフ7、8)、前年をやや下回る水準です。

 これは新型iPhone(iPhone8、同8PlusとiPhoneⅩ)の立ち上がりが昨年よりも遅れているため、TSMCが全量を受託していると言われている新型iPhone用CPU(iPhone8、8Plus、Ⅹともに、線幅10ナノの「A11Bionic」チップをCPUとして使う)の生産、出荷が昨年に比べ遅れていると思われるからです。

 一方で、TSMCの線幅別売上構成比を見ると(グラフ6)、2017年4-6月期に1%だった10ナノが7-9月期には10%になっています。実数を試算すると10ナノ半導体の出荷は、2,100万台湾ドルから2億5,200万台湾ドルに急増していますが、これは新型iPhone向けと思われます。また、4Q(10-12月)は新型iPhoneの本命であるiPhoneⅩ(11月3日発売)の出荷が始まるため、CPUの生産、出荷も増えると思われます。

 来年秋発売予定の次期iPhoneのCPUは7ナノになり、受託生産業者はTSMCが主体となって、サムスンが新たに加わると言われています。新型iPhoneの中でもiPhoneⅩは人気が高い半面、初期生産量が少ないと言われており、このことはTSMCの業績に対して短期的にはネガティブな材料です。しかし、最新鋭の「Ⅹ」の人気が高いことは、次期iPhoneの成功を予想させるものです。そのため、TSMCとサムスンによる次期iPhone用7ナノ設備投資が、今下期から活発になると予想されます。

グラフ6 TSMCの線幅別売上比率

単位:%
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ7 TSMCの月次売上高

単位:100万台湾ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ8 TSMCの月次売上高:前年比

出所:会社資料より楽天証券作成

 

中国の半導体設備投資の動きにも注目したい

 このほか今期から来期にかけて重要になるのが、中国の外国資本が入っていない民族系半導体メーカーの半導体設備投資です。最先端装置ではありませんが、今期から中国向けの商談が本格化しているため、来期には製造装置の出荷が始まると思われます。

 

注目銘柄

 これまで見たように、半導体デバイスの需要と出荷は好調が続いていますが、足元の半導体設備投資は高水準ながら伸び率が低下しています。これから始まる2Q決算では半導体製造装置メーカー各社の今下期の見方に注目したいと思います。

 注目銘柄は以下の通りです。

 まず、日本製半導体製造装置メーカーの代表格である東京エレクトロンです。コータ/デベロッパ、プラズマエッチング装置など前工程の多くの重要装置で高い市場シェアを持っています。顧客層も幅広いです。通期で業績見通しの上方修正があるのか、なくても今下期、来期に対して強気の見方をしているのかどうかが焦点になります。ウェハ洗浄装置でトップのSCREEN ホールディングスも同様です。

 後工程では、ディスコアドバンテストです。ディスコのダイサー(回路を描いたシリコンウェハをチップに切り出す装置)、グラインダー(ウェハの底面を削る装置)とそれらのブレード(刃)の受注、出荷は顧客の半導体工場の稼働率に敏感です。今2Qは今1Qに好調だったダイサー、グラインダーの受注が一服し、ブレードが伸びている構図と思われますが、半導体工場の高稼働率が続けば、ブレードだけでなく、ダイサー、グラインダーの受注、出荷が再び増える可能性があります。

 アドバンテストは、2017年3月期下期に急増した受注に対して生産体制が追い付かず、他の半導体製造装置メーカーと比較して十分な業績が実現できませんでした。今上期に生産体制の増強が実現しているならば、受注増加と、業績見通しの上乗せが期待できる可能性があります。

 半導体デバイスメーカーでは、ソニー、ルネサス エレクトロニクス、ローム、東芝の4社の決算が注目されます。たとえばロームは、顧客の幅が広く、自動車、スマートフォン、家電、産業機械などほぼ全分野で需要が好調になっている模様です。このため今上期業績予想を上方修正しました(従来の今上期営業利益予想200億円→修正予想270億円、前年比71.0%増)。通期見通しはまだ修正されていないため、どのような見方になるのかが注目されます。

 この他、シリコンウェハメーカーの信越化学工業、SUMCOの決算も注目されます。シリコンウェハの需給逼迫が続いており、SUMCOはすでに値上げと若干の増産投資を決めました。

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