ご参考:「合理的へそ曲がり」風の発想の例

 筆者のいう「合理的へそ曲がり」風の発想だと、例えば、このような仮説を立ててみたくなるという(あくまでも)「例」を10個ほど挙げてみよう(結果に於いて正しいこと、儲かることは、一切保証しない)。

  • 非倫理的だと言われるようなビジネスをしている企業は、嫌われる分だけ株価が安い(即ち割引率=期待リターンが高い)からいい投資対象ではないか。逆にESG(環境・社会的責任・ガバナンス)が高評価の企業はダメだろう。利益に関係ない人気が株価に含まれている可能性があるのだから。
  • 人は人気者にいずれは飽きる。株価が上がり、売買が顕著に増えている状態が続いている銘柄からは静かに降りる(アンダーウェイトする)のがいいのではないか。
  • 経営者の評判が悪い企業は、経営(者)が少しマシになるだけで改善するのだから、プラスのサプライズが起こりやすい企業ではないか。
  • IRや情報開示・プレゼンテーションが優れている企業は、そうでない企業に比べて、投資家の安心感を買いやすく、その分既に株価が割高ではないか。
  • 情報が乏しい銘柄はよく分からない分、投資家が株価を評価する際のリスクプレミアムが大きいのではないか。
  • 大手証券が揃って推奨している銘柄は投資しても割が悪いのではないか。なぜなら、既に買っている人が多くて、これから買う人が少ないから。
  • 社外取締役が多い会社はダメなのではないか。ビジネスが分からない人を経営に入れて、外向けに格好をつけているのだから、中身は悪い可能性が高い。
  • 倒産リスクの高い会社への投資は有望ではないか。機関投資家が投げ売りして下がった株価である可能性があるし、リスクプレミアムも大きいだろうし、「危機」である方が社員は「平時」より頑張るだろう。
  • 時価総額の大きな会社は、少しアンダーウェイトにする方がいいのではないか。小さな会社に比べて、2倍、3倍になる確率は小さいだろうし、それ自体のウェイトが大きいことが分散投資に逆行するから。
  • 何はともあれ、売買コストは確実なマイナスなのだから回転率が小さく済む運用戦略を考えるべきだ。手広く分散投資を行ってバランスを取り、のんびりしているのがいい。

 ご参考になれば幸いだ。

【補足コメント】

 5年と少々前の記事であり、当時と今とで基本的な考え方は変わっていない。投資は「合理的へそ曲がり」のアプローチで行うのが楽しいし有望だろうと、筆者は現在も考えている。

 記事を読み返すと、筆者が「皮肉屋」の運用観を持った理由が詳しく書かれているが、熱心な個人投資家の中には、(1)証券会社のレポートを読み、(2)ファンダメンタル分析・テクニカル分析を「修行」し、(3)市場で話題の銘柄に注目し、(4)活発に売買するような、「実はダメなファンドマネージャー」に近い投資家像を目指している残念な方が少なくないのではないかと危惧している。別のアプローチを採ることを強くお勧めする。

 尚、記事中にValue投資が長期的にはGrowth投資よりも過去に有効だったと書かれているが、昨年までの数年間は概ねGrowth投資の方が優勢だった。直接的には、近年発達した情報・テクノロジーのビジネスの収穫逓増性に大きな原因があると思われるが、要はValue投資もGrowth投資も常に同じ手を使うのでは上手く行かないと考えておいていい。今年に入ってからここまでは、Value銘柄の相対的優位性が観察されている(当社のチーフストラテジスト窪田真之の読み通りの展開だ)。
(2021年4月5日 山崎元)