雇用市場の逆襲!

 1年前、米国では3月と4月のたった2ヵ月間で2,100万人が仕事を失いました。「雇用市場は崩壊した」とか、「10%を超える失業率がずっと続くだろう」など当時は悲観見通しのオンパレードだったのですが、予想に反して、雇用市場は順調に回復。そして、これから雇用市場の逆襲が本格的になりそうです。

 3月の雇用統計の非農業部門雇用者数は、強い数字が期待されています。最新の市場予想によると失業率は6.0%まで低下、NFP(非農業部門雇用者数)は、前月より約25万人増加して63.0万人となっています。今月の雇用統計の詳しい解説は「米雇用統計「めちゃ強い」! 実は大きな「勘違い」だった?」 をご覧ください。

 米国の雇用市場では、コロナ移動制限の緩和に伴い、サービス業、特にレジャー部門で70万人近くの雇用増加が見込まれます。コロナ禍で「失われた雇用」の約3分の1が、レジャー部門と接客業なのです。外出の増加とサービス業の需要には相関関係が存在しています。アウトドアのレジャーの機会が増えることで、雇用増加にさらに弾みがつく期待があります。また、冬の悪天候という季節的要因の影響を受けた建設業の雇用も回復しています。

 米国は、今年中に全ての米国人がワクチン接種を受けるように計画が進んでいます。人口の一定以上の割合が免疫を持つことによって感染流行がなくなる集団免疫と移動制限の解除が進むことで、第2四半期の米労働市場は急拡大するとの見方です。

 ただし、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、実際の失業率は、雇用統計上に表れている6%よりむしろ10%に近いと、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は警告。ブレイナードFRB理事やイエレン財務長官もこの意見を共有しています。

 FRBによると、統計では見えない、いわゆる「隠れ失業」が深刻なのだということです。「隠れ失業」は所得水準によって異なり、所得の下位4分の1の失業率はさらに悪く、約23%に上ります。状況が改善されなければ「米国の経済成長に長期的な影響を与える」とFRBは警告しています。

 もっとも、イエレン財務長官は最近では「来年の雇用はコロナ流行前のレベルに回復する可能性ある」と前向きな見解に変化しています。これは気に留めておきたいと思います。