6カ月か2年超か

 想定通りに春相場がトリクルアップで進行し、景気・バリュー銘柄の堅調から、半導体銘柄の2月反落からの失地回復、グロース銘柄全般の復調始動、さらにハイパー・グロース銘柄の見直し物色へとつながるとしましょう。これを金融相場サイクル全体の中に位置づけると、上昇局面の中腹以上を、銘柄・テーマ別に時間差で進むことになります。

 この金融相場の後半戦は、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和を継続するとコミットする一方で、景気回復が加速して企業業績も伸びるなど、マクロの好条件に支持されて起こります。

 来る場面の難しさは、経済ファンダメンタルズ、金融・財政政策、株価・金利・為替・商品など市場動向が、相互に作用し、相場展開のパズルが複雑化することです。金融相場の第1波はもとより、第2波も、まだ景気回復局面以前であり、もっぱら期待だけで相場をけん引するシンプルさがありました。相場に下げ場面があっても、経済指標や金利を気にすることなく、相場のリズムだけで買い向かうことが可能だったのです。

 春相場以降は金融相場という上昇気流の中でも、経済と政策と市場が三つ巴(どもえ)で支持したりけん制したりする展開の中で、2021年1月末や2月下旬に生じた程度のエアポケットが1~2カ月と間を空けずに起こり得ると想定しています。

 さらにその先では、景気回復加速で米GDP(国内総生産)のデフレ・ギャップが2021年中にも解消される公算から、金融緩和の出口への一歩として、量的緩和のテーパリングへの臆測が浮上するでしょう。超ド級の金融緩和の下での超ド級の金融相場が、この先高く上がるほど、「出口」論のインパクトは大きくなるでしょう。

 したがって、サイクル中腹以上の春相場から参入する投資家にとっては、銘柄選択以上に、時間軸の判断が重要、金融相場の残存期間として6カ月程度から要警戒と考えています。ハイテク・グロース銘柄がこの期間に新高値に至るかなど、銘柄ごとに検討も必要でしょう。

 もちろん、相場はそこで終わるわけではありません。特にコロナ禍ショック初期に割安に購入したお宝ポジションを保持する投資家は、筆者が警戒する金融相場終えん後の立ち直りまでカバーする2年超を視野に、2021年中に部分退避(利益確定売り、ないしヘッジ)か、長期投資に徹するか、判断する余地があるでしょう。

 いずれにしても、相場は上がるばかりではありません。大きく上がれば、大きく下がることも念頭に、下がる場面のアクションを、より具体的に考えておくべき局面に入ります。

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