NASDAQは上方向の意識強まる。トレンド転換のサインはまだ見られない

 そもそも、先週見せたグロース株の復調は、米国株市場の動きが日本株に波及した構図ですので、米NASDAQの動きについても見ていきたいと思います。

■(図5)米NASDAQ(日足)とMACD(2021年4月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 結論から言ってしまうと、日足チャートで見た先週末時点のNASDAQはかなり上方向への意識を強めて取引を終えています。

 株価と移動平均線との絡みでは、週末2日(金)の取引で5日・25日・75日の3本の移動平均線を上抜けたほか、直近高値どうしの上値ライン(2)も超えてきています。MACDのシグナル上抜けクロスも出現しており、0pラインも超えてくるとさらに上昇に勢いが出てきそうです。

■(図6)米NASDAQ(週足)の平均足とMACD(2021年4月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ただ、週足で中期的なトレンドをみると、日経平均と同様に上方へのトレンド転換のサインがまだ出ていませんので、引き続き買いが入って、短期的な強さを中期的な強さに移行できるかが焦点になります。

 先ほども述べたように、半導体関連株を中心とするグロース株への物色は追加経済政策をきっかけとした「政策に売りなし」の雰囲気によってもたらされていますが、これから政策を実現させていく段階ですので、米金利の上昇ピッチの加速への警戒感がくすぶる中で、「期待感だけで上値を伸ばすには限界があるかも」ぐらいの気持ちで上値を意識するのがちょうど良いかもしれません。

 また、米国が打ち出した今回の経済政策は、バイデン大統領が述べているように、「中国との競争に打ち勝つ」という部分が強調されました。米議会では今回の政策を議論するにあたり、与野党を問わず反対の声が予想されていますが、とりわけ、今回の政策の財源として、法人税の引き上げなどの企業増税で賄うやり方は、法人税を引き下げてきたこれまでとは180度の方向転換でもあるため、反対の声は大きそうです。そのため、超党派で賛同が得られやすい対中国政策の側面を打ち出して乗り切ろうとする思惑が感じ取れます。

 さらに、日銀短観に話を戻すと、コロナ禍以前の水準まで回復した製造業の景況感に比べて、非製造業については、国内のコロナ状況が依然として影を落としています。米国や他の地域と比べると、日本の非製造業の回復はかなり遅れている部類に入り、コロナ対応力の差が出始めている可能性があります。そのため、同じ景気敏感株でも海外で稼ぐ企業がより選好されそうです。

 製造業についても、コロナ禍からいち早く復調を見せた中国経済の恩恵を大きく受けている面がありますが、次第に明確になりつつあるバイデン政権の対中政策の姿勢が協調というよりは対立に近いイメージに近づきつつあるため、今後の米中関係には注意を払う必要があります。

 まもなく日米の決算シーズンが本格化していきますが、その前に「半導体を中心とするグロース株の物色が継続するか」、そしてそれと同時に、「経済指標の改善を背景とする景気敏感株にも買いが入るか」の2点が今週のカギを握ります。両方を達成できればさらなる上値追いとなり、どちらか一方でも達成できれば、相場全体として堅調に推移することができそうです。