ザッカーバーグはなぜ資産7.4兆円の長者になったか?

 ところでフェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグは、個人資産7.4兆円と言われています。彼がリッチになった経営上の理由やコンピューター・コードの書き手としての才能などは、いろいろ議論することができると思います。

 しかしファイナンス(財務理論)の見地からは、なぜ彼が長者になったかの説明はシンプルです。

 それはマルチプル効果(multiplier effect)です。

 創業者がその会社をIPOすると、その会社が稼ぎ出している利益の何十倍、時には何百倍もの評価を投資家は喜んでつけるわけです。このマルチプル効果こそが、シリコンバレーでどんどん億万長者が生まれている理由に他なりません。

 つまり、我々が株式投資をするということは、ザッカーバーグを7.4兆円長者に押し上げた、このマルチプルのバトルに自分も参戦することに他ならないのです。

 まとめれば、シリコンバレーで起業する若者を、一夜にして億万長者にするのは、株式というものが持つ魔力のせいであり、その魔力の正体とはマルチプル効果に他ならないのです。

 いまマルチプルはPERの倍率が高い企業ほど、破壊力を持ちます。その破壊力は、良い方にも、悪い方にも作用します。

 良い銘柄、つまり決算で予想を上回ることができる企業の株価は、乗数効果を伴って雪だるま式に大きくなります。

 悪い銘柄、つまり決算でディサポイントメントを出す企業の株価は、痛みが何倍にもなってはね返ってくるわけです。

 こう書いてくると、高PER株への投資は、漫然とやっているとたいへんなコトになることがお分かりいただけると思います。

 私が、口を酸っぱくして、「決算、決算、決算!」とガミガミ言うのには、そういう理由があるのです。

第4章「企業の成長と資本の関係」はこちら