3.激しい値動きや仕手戦

 先の座談会に出席された弱気氏が指摘した、激しい値動きや、ゲームストップ株を巡る投機的な動きなどがバブルの兆候であるという考え方についてはどうか。

 この考え方について、筆者は経験的にも理屈の上でも「一理ある」と思う。日本のバブル期にあっても、1988年、1989年と、日経平均の値動きが荒くなっていた。

 バブルの状態で株価の動きが荒くなることには理屈がある。ファンダメンタルな投資価値を離れて株価が上昇すると、「他人がさらに上値を買うだろう」との予測が株式を買う最大の材料になる。しかし、この理由で株式を買っている投資家は、「他人の気が変わること」を大いに恐れなければならないのだが、「他人の気持ち」はそれ自体が大いに不安定なものであることに加えて、自分がそれを正しく把握できているかについても自信を持てない。そして、株価が下がった時に「これ以下の株価は割安だから、持ち続けたら大丈夫だ」と考えられるアンカー(錨)のような株価が近くにない。すると、更に値下がりし、これを取り返す機会が乏しいのではないか、という恐れからパニック的な売りが発生しやすい。

 こうした心理を伴う短期的な急落局面に時々見舞われながら、しかし、「カネ余り」を背景に気がつくとじわじわと株価が上がって来るというような動きが、バブル期の株価にあっては典型的だ。

 ゲームストップ株にあったような、古い言葉で言うと「仕手戦」は、株価がバブルでなくとも局地的には起こるが、バブルの時期は新規の市場参加者が増えることもあり、派手な動きになりやすい。

 日本のバブルの経験を振り返ると、「本格的なバブルは、この程度の生やさしいものではない」と筆者は思うのだが、日経平均の値動きが荒くなることは、「バブルっぽい」環境の状況証拠の1つであると考えていいと思う。

 また、米国にあっては、将来の企業買収を目的として、「箱」だけを用意して上場して資金調達するSPAC(特別買収目的会社)の存在などは、いかにも「バブルっぽい」。

4.バブルで儲ける「悪い人」の存在

 バブルの最中にあっては、バブルを利用して大いに儲ける経済倫理的に疑問を呈したくなるような人々が活躍することが多い(合法である場合も、違法である場合もある)。彼らは、実社会にあってバブルを駆動するエンジンとなる。

 日本のバブルや米国のサブプライム・バブルにあっては、金融業者や不動産業者が一時大いに儲けた。今回のバブルに、この種の「悪い人」はいるか?

 筆者は、今回はいつもバブルに顔を出す金融業者に加えて、自分で自社のストックオプションを持ちながら、自社株を買って株価を上げようとしている米国企業のCEOたちが、新たなバブルの「悪い人」として登場していると思っている。彼らの強欲はなかなかのものだ。

 もちろん、社債を束ねて証券化商品を作る金融マンや、その証券化商品を運用対象にする運用マンも今回のバブルの恩恵を受けている。企業CEOを含めた三者の利害で結ばれた「バブルの輪」は強力だ。

「政府・中央銀行のおかげ」だけで出来ているバブルではないように思うし、この関係はまだ強化される余地がありそうだ。即ち、行き過ぎになりやすい。

 筆者が現在形成中だと思っているバブルが、「もう終わり」ではなく、「まだ続く」公算が大きいと考える理由の1つだ。

 但し、社債市場とバランスシートを弱体化させた企業は、バブルが決壊する場合の1つの要因になり得るので注意しておきたい。