筆者の回答と、答え合わせ

 さて、読みようによっては何れも有益な相場格言だ。筆者は、前掲書を開きながらすっかり迷ってしまった。

 何せ、「初級」、「中級」、「上級」とある中の初級の問題で、仕事柄なじみがあるはずの相場が題材の問題を正解出来ないと、筆者としては悔しい。しかし、結論が出ないではないか。

 迷った挙げ句、山かけをすることにした。著者は、統計の専門家で、この本は統計の本だ。明日の事象が、今日までの事象と独立であることを語る3.と、現実の世界では確率分布の想定が当たっているとは限らないことを指摘する5.がいいように思えて来た。

 というわけで、ページをめくって著者による正解を見てみたら、正解は2.と4.だという。2.は「投資家心理と相場の行き違いを言い得て妙である」とあり、4.については、株価の戻りを期待する「人情」に、「少しくらいの損でさっさと売っておけ!」というが見切り千両であるとの解説がある。

 ちなみに、3.については、「3.も相場格言のように思えたかも知れないが、これは明日のことはあれこれ考えても仕方がない、という意味で相場には無関係」という説明がついていた。

 あれこれ相場に結びつけずに、もともと相場格言だったものを選べば良かったのだ。我ながら、スランプに陥った受験生の誤答のような勘の悪さである。

【コメント】

 2015年の記事だが、内容が格言なので、今見て修正したい点はない。相場の世界は、(1)将来が不確実で、(2)損得があり、(3)人間がやるもので、(4)感情に大いに関わるので、世間・人生一般の多くの格言が相場の世界にあてはめて解釈可能だ。読者にあっては、別の格言で試してみて欲しい。

 尚、相場と人生は、前者が後者に包含される関係なので、残念ながら「相場が分かると、人生が分かる!」とは言えないが、両方を大いに楽しみたいものだ。
(2021年3月14日 山崎元)