「視・観・察」で経営者をみて、銘柄選定する

「視・観・察」は、人を真に知ろうとするには、この3つをもって見分けていく必要があるというものです。投資対象として銘柄を選定する上では、経営者がどのような人物かも大きな要素になってきます。このため、この「視・観・察」で経営者をみていこうという考えです。

第1段階:視る
 その人の見た目はどうか、服装は? しぐさは? 全体の印象は? そして、どのような言葉を発し、どのような行動をしているのかをみなさい。

第2段階:観る
 その人の見た目、印象、どのような言動をしているのかをみるだけでは不十分。どうしてそのような見た目、印象、言動になるのか、その動機をみなさい。

第3段階:察する
 その人の見た目、印象、どのような言動か、そしてその動機を見ただけでは、まだ不十分。その人は、何をすることに満足を感じるのか、喜びを感じるのかをみなさい。

 渋沢は「行為と動機と満足する点の三拍子がそろって正しくなければ、その人は正しい人とは言えない」と言っています。渋沢の言う正しいとは、正しい道理に基づいているか、仁義道徳に基づいているかということです。

仁義道徳に基づいているかは、お金の使い方にあらわれる

 仁義道徳に基づいているかどうかは、1つの見方として、お金の使い方にあらわれると考えています。簡単に言うと、お金を自分のために使っているか、人のために使っているかです。渋沢も「お金を正しい道理に基づいて集めて、人の幸せのために使いなさい」と言っています。

 第3段階の「何に満足するか」が分かりやすいでしょう。自分のためにお金を使っている人は、大金持ちになり、大豪邸に住み、「俺はすごいだろ」「すごい人だと思われたい」が満足する点になっているかもしれません。人のためにお金を使う人は、寄付をしたり、若者の育成にお金を使ったりして、「人の喜ぶ顔がうれしい」が満足する点になっているかもしれません。

 上場企業の経営者に直接会って話しをすることはなかなか難しいですが、株主総会、会社のホームページ、IRセミナー、ネット上の記事、動画などから、どのような経営者なのかをある程度調べることもできます。「この会社の株を買ったらもうかるか」だけではなく、渋沢の言う士魂商才の経営者であるかを「視・観・察」でみていっても面白いのではないでしょうか?

参考文献:
論語と算盤(角川ソフィア文庫)
現代語訳 論語と算盤(ちくま新書)

★今回の記事『渋沢栄一に学ぶ、企業経営者の人物観察法:資産運用で人格を磨く(8)』のオンライン解説を、3月21日(日)17:00~17:30に行います(参加費無料)。
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