★今回の記事『渋沢栄一に学ぶ、企業経営者の人物観察法:資産運用で人格を磨く(8)』のオンライン解説を、3月21日(日)17:00~17:30に行います(参加費無料)。
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 渋沢栄一は「日本の近代資本主義の父」と言われる人物で、2024年には1万円札の顔となります。渋沢栄一の談話録である『論語と算盤』は今も多くの人に読み継がれています。その『論語と算盤』を読んでみると、資産運用においても同じことが言えると思うことが多々あり、今回はその一端についてお伝えしていきたいと思います。

 渋沢は、収益だけが目的の拝金主義の商業では世の中が良くならない、武士のように精神のみに偏ってお金を卑しいものとして商業をさげすむのでは、またこれも良くならない、武士の道徳と商業の才能が合わさった「士魂商才」こそが世の中を良くする、そうでなければ長続きはしないと考えました。

 そして、孔子の教えを記した論語を道徳として選び、論語の教訓を基にした商売に徹し、「士魂商才こそが世の中を良くする」ことの証明に自らの人生を賭けたのです。

渋沢の言う合本主義は、個人投資家に通じる

 渋沢は「日本の近代資本主義の父」と言われていますが、実際には資本主義ではなく、合本主義という言葉を使っています。

 資本主義というと、一歩間違えれば大資本家が労働者を酷使し、結果として一部の資本家だけに富が集まり、多くの人は貧しいという状況を生みかねません。これが渋沢の言う「道徳のない商業」です。渋沢の言う合本主義とは、多くの人が少額でもよいのでお金を出して、皆のために使っていくことに携わっていきましょうというものです。

 そうだとすると、大資本家が株式の多くを占有するのではなく、個人投資家が少額でもよいので株式を保有していくことは、渋沢の言う合本主義にも通じるものと私は考えています。

 個人投資家が株式投資する上では、どのような企業を選定するかが重要ですが、『論語と算盤』に参考になることが書かれています。それが、人物観察法の「視・観・察」です。

「視・観・察」で経営者をみて、銘柄選定する

「視・観・察」は、人を真に知ろうとするには、この3つをもって見分けていく必要があるというものです。投資対象として銘柄を選定する上では、経営者がどのような人物かも大きな要素になってきます。このため、この「視・観・察」で経営者をみていこうという考えです。

第1段階:視る
 その人の見た目はどうか、服装は? しぐさは? 全体の印象は? そして、どのような言葉を発し、どのような行動をしているのかをみなさい。

第2段階:観る
 その人の見た目、印象、どのような言動をしているのかをみるだけでは不十分。どうしてそのような見た目、印象、言動になるのか、その動機をみなさい。

第3段階:察する
 その人の見た目、印象、どのような言動か、そしてその動機を見ただけでは、まだ不十分。その人は、何をすることに満足を感じるのか、喜びを感じるのかをみなさい。

 渋沢は「行為と動機と満足する点の三拍子がそろって正しくなければ、その人は正しい人とは言えない」と言っています。渋沢の言う正しいとは、正しい道理に基づいているか、仁義道徳に基づいているかということです。

仁義道徳に基づいているかは、お金の使い方にあらわれる

 仁義道徳に基づいているかどうかは、1つの見方として、お金の使い方にあらわれると考えています。簡単に言うと、お金を自分のために使っているか、人のために使っているかです。渋沢も「お金を正しい道理に基づいて集めて、人の幸せのために使いなさい」と言っています。

 第3段階の「何に満足するか」が分かりやすいでしょう。自分のためにお金を使っている人は、大金持ちになり、大豪邸に住み、「俺はすごいだろ」「すごい人だと思われたい」が満足する点になっているかもしれません。人のためにお金を使う人は、寄付をしたり、若者の育成にお金を使ったりして、「人の喜ぶ顔がうれしい」が満足する点になっているかもしれません。

 上場企業の経営者に直接会って話しをすることはなかなか難しいですが、株主総会、会社のホームページ、IRセミナー、ネット上の記事、動画などから、どのような経営者なのかをある程度調べることもできます。「この会社の株を買ったらもうかるか」だけではなく、渋沢の言う士魂商才の経営者であるかを「視・観・察」でみていっても面白いのではないでしょうか?

参考文献:
論語と算盤(角川ソフィア文庫)
現代語訳 論語と算盤(ちくま新書)

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