比較的中立的な立場で予測するIMFによる経済見通し

 それでは、比較的中立的な立場で予測する国際機関の経済見通しはどうでしょうか。

 IMF(国際通貨基金)は1月26日、世界経済見通しを改定し公表しました(下表)。IMFは年4回経済見通しの改定を行っており(1月、4月、7月、10月)、マーケットが注目しています。

 2020年の世界全体の経済見通しは、巨額の財政出動によって2020年半ばから回復し、昨年10月時点の予測▲4.4%から0.9%上方修正し、▲3.5%としています。そして2021年の世界の成長率見通しを5.5%とし、前回予測(2020年10月)5.2%から0.3%上方修正しました。

 日本は、2021年の成長見通しは3.1%と前回よりも0.8%の上方修正、米国は5.1%と2.0%の大幅上方修正となっています。日米経済は財政出動の効果で2021年後半には2019年末の水準を取り戻すと予測しています。米国経済は米議会予算局の予測よりも強気の見方となっています。ただ、欧州は新型コロナの感染再拡大で経済活動が制限され、前回よりも1.0%下方修正され、4.2%と予測しています。今年の成長は地域によって回復力の差が出てくる予測となっています。

IMF 世界経済見通し(2021年1月時点、成長率%)

  2020年見通し 2021年見通し 2022年見通し
20/10 今回 20/10 今回 20/10 今回
時点 (21/1時点) 時点 (21/1時点) 時点 (21/1時点)
世界 ▲4.4 ▲3.5 (+0.9) 5.2 5.5 (+0.3) 4.2 4.2 (+0.0)
米国 ▲4.3 ▲3.4 (+0.9) 3.1 5.1 (+2.0) 2.9 2.5 (▲0.4)
ユーロ圏 ▲8.3 ▲7.2 (+1.1) 5.2 4.2 (▲1.0) 3.1 3.6 (+0.5)
日本 ▲5.3 ▲5.1 (+0.2) 2.3 3.1 (+0.8) 1.7 2.4 (+0.7)
中国 1.9 2.3 (+0.4) 8.2 8.1 (▲0.1) 5.8 5.6 (▲0.2)
※( )内は昨年10月時点からの修正幅

 IMFの予測は、主要国で2021年夏までにワクチンが広く普及する前提で試算しています。しかし、欧州ではワクチン供給が足元で遅れており、米国でもワクチン普及スピードは予定より遅れている状況です。日本は、まだ接種が始まっておらず、全体の計画も後倒し傾向にあります。日米欧とも三つの不足、すなわちワクチンの「供給不足」、「接種会場不足」、「接種人員不足」によって、IMFの予測通りには進まないかもしれません。次回4月の改定までに、米国経済対策の進捗状況、ワクチン普及度合い、コロナ感染収束度合いによって、景気回復が微妙にずれてくる可能性があります。回復時期や金融政策が前倒しになるのか後倒しになるのか、その過程で実体経済のリアル・チェックをしながら相場シナリオを想定していくことになりそうです。