1月の米雇用統計と経済見通し
先週2月5日に発表された1月の米雇用統計は、6.3%と前月の6.7%から改善しましたが、これは労働市場への参加者が減少したことによるところが大きいといわれています。コロナ前の昨年2月の失業率は3.5%と、イエレン財務長官が目指すところですが、3月以降コロナ禍による失業でいまだ900万人超が復職していない状況となっています。
コロナ前の雇用者の増加数は15万人から25万人の間で増加していましたが、900万人復職のためには月15万人の増加で5年かかります(15万人×12カ月×5年=900万人)。月25万人の増加でも3年かかることになります(25万人×12カ月×3年=900万人)。
900万人の復職には月25万人の増加では2023年の終りになるため、イエレン財務長官の「来年に完全雇用に戻る」という予想から1年遅くなります。「完全雇用」がどういう定義かわかりませんが、完全雇用の来年達成が900万人の復職につながるとすれば、毎月37.5万人の雇用増が必要となり、かなりの大幅増加が続くということになります。また、この状態が続けば、FRB(米連邦準備制度理事会)の量的緩和の縮小や利上げがかなり前倒しになることが予想されます。当然、マーケットはそれよりも早く引き締め期待を高めていくことになり、金利上昇、ドル高、株高が予想されます。
CBO(米議会予算局)は2月1日に公表した新たな経済見通しで、2021年の実質GDP(国内総生産)が昨年の▲3.5%から+4.6%へと回復し、1999年以来、22年ぶりの高成長になると予測しました。新型コロナウイルスワクチンの普及などを前提にしており、実質GDPの実額は2021年半ばにコロナ禍前の水準を回復すると見込んでいます。
雇用については、失業率は緩やかな回復にとどまり、 3%台後半に達するのは2026年になると見込んでいます。しかし、失業率はその後も高止まりが続き、感染拡大前の水準には戻らないと予想しています。また、物価はFRBの目標とする2%に到達するのは2024年と予想しています。
今回の見通しは、1.9兆ドル規模の追加経済対策案は反映されていないとのことです。満額の実現は難しいとの見方もありますが、部分的にも実施されれば米景気は一段と押し上げられることになります。