中国経済統計は信用できるのか?

「中国政府が発表する経済統計は信用できない! 加藤さん、本当のところどうなんですか?」

 中国研究を生業とする私が、各国の政府、市場、メディア関係者たちから、幾度となく耳にしてきた問題提起です。

 1月、中国で経済統計に関する収集、管理、分析、公報などを統括する国家統計局が、2020年第4四半期(10-12月)の実質GDP(国内総生産)は前年同期比6.5%増、通年でも前年比2.3%増となったと発表しました。この数字を“鵜吞(うの)み”にした日本のメディアも同様に伝えています。私自身も、本連載でその数字を元に分析をレポートしました(中国GDPが100兆元超え。コロナ禍2.3%成長でも、低所得層6億人の「途上国」)。

 一方で、本連載をご覧いただいている投資家を含め、数字の「信ぴょう性」について疑問を持っている方は少なくないでしょう。私自身、中国政府が発表する統計データを目にするたび、引用するたびに、「大丈夫だろうか?」という疑念や困惑を持たなかったと言えば、うそになります。

実際のところはどうなのか?

 今回のレポートでは、「中国政府が発表する経済統計データの信ぴょう性」について考えてみたいと思います。先に断っておきますが、言うまでもなく、この疑問を解消できるわけでも、100%正しい回答を提供できるわけでもありません。ただ、皆さんがこの問題をこれまでよりも臨場感のある、立体的な根拠を持って考え、投資の動機にするわずかな素材は提供できるのではないかと考えたため、筆を執った次第です。この問題に向き合い、実際に中国の労働者や消費者が営む経済の現場を垣間見てきた人間として。

 以下、中国政府の取り組みを検証しつつ、中国北京市、遼寧省瀋陽市、米ハーバード大学キャンパスの三つの現場での私自身の経験を元に、レポートしたいと思います。