イエレン財務長官とドル安

 バイデン新政権のもとで財務長官に就任するFRB(米連邦準備制度理事会)前議長のイエレン氏は、「ドルの価値は市場によって決定されるべきであり、自国の輸出を有利にするためにドル安を求めることはしない」と述べ、為替操作に断固反対する立場を明らかにしました。トランプ前大統領のドル安誘導政策に決別したという意味では、「ドル高志向」と受け取れます。

 だからといって、米国が長期的なドル安傾向に歯止めをかける政策をとるのかというと、そうではない。むしろその逆。

 イエレン財務長官は、コロナ禍から米経済を一刻も早く立ち直らせるには「大胆な行動(Act Big)」が必要であるとして、バイデン大統領の大型景気刺激策を応援する考え。お金が必要とあれば、米50年債の発行も検討するということです。

 そしてFRBは超緩和路線を継続。ゼロ金利を続けて物価が一時的に2%を超えてもFRBは利上げしない。ずっと先の話を心配するより、まずは米経済を「ホット」にすることだとパウエルFRB議長は語ります。

 バイデン政権の景気刺激策、イエレン財務長官のドル高政策、そしてパウエル議長のゼロ金利のトリオによって米国が経常赤字(貿易赤字)と財政赤字の「双子の赤字」の拡大方向へ進んでいることは明らか。双子の赤字の増大は、将来的に深刻な経済危機を誘発することになり、投資家の深刻なドル離れにつながるリスクをはらんでいます。

 米国の政策は、ドル高ではなくドル安。為替操作はしない。しかし市場によって決定されるドルの価値は安くなります。