世界の投資家を悩ませる最大の「謎」

 世界の投資家を悩ませている最大の「謎」。それは最悪の経済と株価のかい離です。世界経済は明らかに悪化しているのに、なぜ株価が史上最高値か、あるいはそれに近い水準で取引されているのか。

 コロナウイルスの感染大流行によって、世界経済は数百年ぶりとはいわないまでも、この数十年間で最も急激かつ深刻な同時不況に陥りました。それにもかかわらずNY株式市場は史上最高値を更新し続けています。2020年のダウ平均株価を振り返ると、 2月に急落して一時1万8,000ドル台まで値下がりしたものの、その後11月には初めて3万ドル台の大台に乗り、その後も勢いは止まらず。日本の株式市場では、2020年の日経平均株価の16%高となって、年末終値としては史上最高値を付けた1989年(3万8,915円)以来31年ぶりの高値水準。実態経済と金融市場のかい離は広がるばかりです。

 今月発表された米国の12月雇用統計では、失業率は6.7%で高止まりするなかでNFP(非農業部門の雇用者)は前月比で14万人も「減少」。しかし、マーケットが動じることはなかった。バイデン大統領が国民1人あたり約14万5,000円の直接給付を含む200兆円規模の景気刺激策を発表する前のデータということでスルーされたのです。むしろ「悪くてよかった、その方が景気対策はデカくなるから」と、今日の経済が悪いほど明日の経済回復は強くなるという超前向きの理屈で、株価が上昇。

 世界株高の原動力は、世界の主要中央銀行と中央政府による金融・財政支援であることは確かです。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、「予測できる将来にわたって、FRBは低金利政策を継続する」と言明。FRBが「預金するなら、株を買いなさい」と指示しているようなものです。マーケットには「中央銀行(FRB)には、絶対に逆らうな」という格言があります。

 しかし好景気と低金利は永遠に続かない。景気が回復しないというおそれは薄れましたが、一方でインフレ急上昇のリスクが高まっています。株高が流動性(緩和政策)によってつくりだされたとするなら、中央銀行が流動性を止めたときどうなるか。株価に実態経済が近づくよりも先に、株価が実態経済に近づくことも起こりえます。

 多くの中央銀行は、すでに「緩和縮小」に向けて準備を始めています。緩和縮小について今語ることは、未然の引き締めとなってしまうので、FRBとしては絶対に避けたい。しかし、長く放置すればするほど、その時が来た時金融市場の混乱は大きくなる。今週はFOMC(米連邦市場委員会)が開かれます。