コロナ後に加速する「雇用なき回復」

 米国の製造業生産高は好調。意外と思うかもしれませんが、ほぼコロナ前の水準まで戻っているのです。ところが今月発表された米国の最新雇用統計によると、非農業部門雇用者数は▲14万人と採用に急ブレーキがかかっている。先週発表された新規失業保険の申請件数は90万台で高止まり。

 雇用減のなかでの生産高増加という事実は、米経済が「雇用なき回復」へ進んでいることを示すものです。技術の飛躍的進歩がもたらす生産性向上の期待が高まるほど、この傾向に拍車がかかるでしょう。このことはコロナ後の米雇用市場における長期的な懸念を浮き彫りにしています。

 今週は、2021年最初のFOMCが開催されます。雇用市場の見通し、そして米金融政策との関連についてFRBがどのような見解を示すのか注目。

 クラリダFRB副議長は、「新型コロナの直撃を受けたレジャーや接客業を別にすると、雇用状況は見出しの数字が示すよりもバランスが取れている」と指摘しています。FRBの見解は「雇用縮小は一時的。」これ以上の緩和政策には慎重です。事実、FRBだけでなく世界の中央銀行は「コロナ緩和は終わり」で、今年は「緩和縮小」をメインシナリオに据えようとしています。BoC(カナダ中銀)総裁も「金融政策はすでに十分に刺激的であり、カナダ経済はこれ以上の緩和を必要としない」とはっきり述べています。