2021年の好機・2022年のリスク

 ドル/円相場は、たとえ95円まで進んでも、かつてのドル安局面の円高に比べれば、かなり控えめなものと想定しています。まして他の主要通貨も強くなれば、かつての円独歩高のような苦しみも軽減されるでしょう。さらに、この局面のドル安は、米国など株式相場の活況のみならず、新興国・資源相場の復調を促し、グローバルにリスクオン機運を広げるとみています。

 このシナリオにおいては、日本株は、せいぜい円高分アンダーパフォームしても、堅調さを保つ可能性が高いと判断します。米国株や新興国資産など海外投資は、為替ヘッジしなくても、多くはその値上がり幅が円高による為替差損を凌駕(りょうが)するとみています。日米の短期金利差が小さいので、低コストで為替ヘッジすることも一考です。

 もちろん、為替リスクを伴う海外株式投資、まして新興国・資源相場への投資となれば、相当な高リスクであることは十分認識する必要があります。それでも、このリスクオン見通しを共有する方は、2021年を好機として投資に「慎重に前向きに」乗り出すことを勧めます。かなりの楽観シナリオに思えるかもしれませんが、「金融緩和+景気回復」にドル安が加わる、相当な好条件のそろい踏みといえます。

 ただし、2022年(早ければ2021年後半)には、景気加速、相場過熱、長期金利上昇の組み合わせ次第で、株価の反落、そしてドル安に伴う円高のリスクを排除できないと考えています。現時点ではまだ取り越し苦労の類です。それでも、頭の片隅にこのリスク・シナリオを置きながら、目の前の好機に取り組むなら、いずれ来る投資の撤退戦にも慌てずに済むでしょう。

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