先週の「ジャンル横断・騰落率」を受けた今週の見通し

 先週は“比較的強かった”と書きました。本稿で参照する25銘柄のうち80%にあたる20銘柄が上昇し、騰落率の平均(最大・最小を除く)が、先々週の+0.1%を大きく上回る+2.4%となったためです。

 暗号資産、アジアや米国の主要株価指数、パラジウム、プラチナといった工業用で用いられる割合が比較的高い貴金属、そして原油がいずれも上昇したことから、先週は、全体的には“リスク・オン”だったと言えます。

 このような状況の中、本日、本格的に2021年が始まりました。2021年のさまざまな市場の動向を考える上で、全体的に、どのような点に留意することが必要なのでしょうか。筆者は、2021年は、“分断の発生・深化”に留意することが必要だと、考えています。

 足元、世界的に、地球温暖化の進行を食い止めるという、人類共通の目標を達成すべく、“脱炭素”が叫ばれています。“脱炭素”が人類共通のテーマになりつつあることは、共通の課題を解決するために、人類が同じ認識を持ち、同じ方向を向きつつある、つまり、“脱炭素”をきっかけに人類が一つになりつつある、と言っても過言ではありません。

 ある意味、“脱炭素”は、地球温暖化を“仮想敵”とし、その仮想敵を倒すための、人類共通の“合言葉”なのかもしれません。しかし、時間を“2021年”に限定した場合は、この合言葉が、逆に分断を生み、その分断を深化させる一因になる可能性があると、筆者は考えています。

 地球温暖化が人類の“仮想敵”とはいえ、ガソリンや軽油、灯油などの燃料に関わる業界、化学繊維や化学肥料を重用する業界、あるいはこれらの石油製品や石油製品の原料となる原油をビジネスの柱にしている国家にとって、現実的で具体的な代替策が見つかるまでは、“脱炭素”を全面的に受け入れることは難しいでしょう。

“脱炭素”を推進する人や団体と、すぐに受け入れられない人や団体の間に生まれるものは何か、それは他でもない“分断”です。他にも、2021年に起こり得る“分断”があります。

 コロナ2年目の2021年は、いまのところ感染者が増加傾向にあるため、もしかしたら2020年以上に、“新しい生活様式”の徹底を求められるかもしれません。この場合、順応する人と、そうでない人の間に、これまでよりも大きい“分断”が生まれる可能性があります。

 ワクチンの接種でも、職業や年齢などによって優先的に受けられる人とそうでない人の間に、一時的ではあるにせよ、“分断”が生まれる可能性もあります。

 脱炭素の推進、コロナ禍、新しいリーダーの誕生などによって、2021年は、過去のどの年よりも、変化のスピードが速くなる可能性があります。

 スピード感のある変化は、分断を生み、そして分断を深化させる要因になると、筆者は考えています。この点は、2021年のさまざまな市場の動向を考える上で、留意する必要があります。

 2021年に発生する可能性がある“分断の発生・深化”が与える、主要コモディティ銘柄への影響について、今週の週刊コモディティレポート「脱炭素は、金・プラチナ・原油の上昇要因」で考察を述べています。

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