ビットコイン、3週連続で上昇率1位

“年またぎ”となった先週、ビットコインとイーサリアムの上昇が目立ちました。主要国・企業が通貨のデジタル化を推進する中、デジタル通貨の一翼を担う暗号資産の地位が向上する期待が高まったことが、一因とみられます。

 また、年末年始でも暗号資産の取引が継続して行われていたことや、もともと上昇傾向が鮮明だったことを背景に、投機筋による物色が進んだことも上昇の一因とみられます。先週の値動きによって、ビットコインは、当ランキングで3週連続の上昇率1位となりました。

 ビットコインの次に上昇したのが、トウモロコシ、大豆といった穀物、パラジウム、プラチナといった工業用で用いられる割合が比較的高い貴金属でした。穀物においては、先週と同様、穀物の作付け期にある南米のアルゼンチンでの少雨、港湾従事者のストライキなどによる供給減少懸念が上昇の一因とみられます。

 パラジウムとプラチナは主に、自動車の内燃機関(エンジン)と消音器(マフラー)の間に設置される排ガス浄化装置内の、排ガスが通る機構に用いられています。これらの貴金属が持つ触媒作用(自分の性質を変えずに、化学反応によって相手の性質を変える作用)によって、機構を通る排ガス内の有害物質が、水や二酸化炭素に変換されます。

 このように、ガソリンや軽油といった化石燃料で走る内燃機関を持つ自動車と、パラジウムとプラチナは、密接な関係があるわけですが、目下、内燃機関を持つ自動車の存在と、世界各国で叫ばれている“脱炭素”の考え方が相反している点に、注目が集まっています。

“脱炭素”を叫ぶ声が大きくなればなるほど、ガソリンや軽油、それらを燃料とする内燃機関を持つ自動車、そして、それらの自動車に用いられる貴金属の需要が減少するという連想が、働きやすくなります。

“脱炭素”が叫ばれる中、先週、パラジウムとプラチナの上昇が目立ったのは、なぜなのでしょうか。暗号資産と同様、投機筋による物色が進んだことが一因と、筆者は考えています。

 アジアや米国の主要株価指数、そして原油も上昇したことを考えれば、全体的には小規模ではあるものの、“リスク・オン”(リスクを取って積極的に運用するムード)が起きていたとみられます。そのようなムードの中、パラジウムとプラチナも物色された可能性があります。

 先週は、上昇銘柄数が20(12)、下落銘柄数が5(13)、最大と最小を除く騰落率の平均は+2.4%(+0.1%)でした。全体的には、12月25日(金)から1月1日(金)の週は“比較的強かった”と言えると思います。(カッコ内は先々週)

12月25日(金)から1月1日(金)のジャンル横断騰落率ランキング

※楽天証券のマーケットスピードⅡのデータより楽天証券作成
※銀・パラジウムはミンカブ・ジ・インフォノイドのデータを参照。
※ビットコインとイーサリアムは楽天ウォレットのビットコイン価格を参照。日本時間の前々週土曜日午前6時と前週土曜日午前6時を比較
※騰落率は前々週金曜日の終値と前週金曜日の終値より算出。(前週金曜日終値-前々週金曜日終値)/前々週金曜日の終値

先週の「ジャンル横断・騰落率」を受けた今週の見通し

 先週は“比較的強かった”と書きました。本稿で参照する25銘柄のうち80%にあたる20銘柄が上昇し、騰落率の平均(最大・最小を除く)が、先々週の+0.1%を大きく上回る+2.4%となったためです。

 暗号資産、アジアや米国の主要株価指数、パラジウム、プラチナといった工業用で用いられる割合が比較的高い貴金属、そして原油がいずれも上昇したことから、先週は、全体的には“リスク・オン”だったと言えます。

 このような状況の中、本日、本格的に2021年が始まりました。2021年のさまざまな市場の動向を考える上で、全体的に、どのような点に留意することが必要なのでしょうか。筆者は、2021年は、“分断の発生・深化”に留意することが必要だと、考えています。

 足元、世界的に、地球温暖化の進行を食い止めるという、人類共通の目標を達成すべく、“脱炭素”が叫ばれています。“脱炭素”が人類共通のテーマになりつつあることは、共通の課題を解決するために、人類が同じ認識を持ち、同じ方向を向きつつある、つまり、“脱炭素”をきっかけに人類が一つになりつつある、と言っても過言ではありません。

 ある意味、“脱炭素”は、地球温暖化を“仮想敵”とし、その仮想敵を倒すための、人類共通の“合言葉”なのかもしれません。しかし、時間を“2021年”に限定した場合は、この合言葉が、逆に分断を生み、その分断を深化させる一因になる可能性があると、筆者は考えています。

 地球温暖化が人類の“仮想敵”とはいえ、ガソリンや軽油、灯油などの燃料に関わる業界、化学繊維や化学肥料を重用する業界、あるいはこれらの石油製品や石油製品の原料となる原油をビジネスの柱にしている国家にとって、現実的で具体的な代替策が見つかるまでは、“脱炭素”を全面的に受け入れることは難しいでしょう。

“脱炭素”を推進する人や団体と、すぐに受け入れられない人や団体の間に生まれるものは何か、それは他でもない“分断”です。他にも、2021年に起こり得る“分断”があります。

 コロナ2年目の2021年は、いまのところ感染者が増加傾向にあるため、もしかしたら2020年以上に、“新しい生活様式”の徹底を求められるかもしれません。この場合、順応する人と、そうでない人の間に、これまでよりも大きい“分断”が生まれる可能性があります。

 ワクチンの接種でも、職業や年齢などによって優先的に受けられる人とそうでない人の間に、一時的ではあるにせよ、“分断”が生まれる可能性もあります。

 脱炭素の推進、コロナ禍、新しいリーダーの誕生などによって、2021年は、過去のどの年よりも、変化のスピードが速くなる可能性があります。

 スピード感のある変化は、分断を生み、そして分断を深化させる要因になると、筆者は考えています。この点は、2021年のさまざまな市場の動向を考える上で、留意する必要があります。

 2021年に発生する可能性がある“分断の発生・深化”が与える、主要コモディティ銘柄への影響について、今週の週刊コモディティレポート「脱炭素は、金・プラチナ・原油の上昇要因」で考察を述べています。

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