すそ野も広い「脱炭素」が2021年の最大の物色テーマに

 世界各国が「脱炭素」に向けてかじを切っている中、菅首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と所信表明演説において示しました。脱炭素社会への取り組みに積極的なバイデン氏が米次期大統領に決定したことも、日本の対応が急がれる要因になっていると考えられます。

 温室効果ガス排出抑制には、再生可能エネルギーの一段の普及が不可欠な他、次世代エネルギーとしての水素の活用、二酸化炭素を回収して活用するリサイクル技術の進展なども必要となってくるでしょう。また、ガソリン車から電気自動車や燃料電池自動車などへのシフトを早急に進める必要もあります。

「脱炭素」に関連する分野は数多く、関連銘柄も多く挙がることになります。循環物色が効きやすく、物色は長期化するものと考えられます。

 とりわけ、電気自動車などはこれまでの民間企業の努力がようやく結実するタイミングにも入り、実際に業績面への寄与が早期に表面化しやすいことも物色の支援材料となるでしょう。

 2021年1月からは中国でハイブリッド車の優遇が開始されますが、このように世界的に「脱炭素」を加速させるような動きも強まるとみられるので、折に触れて好材料が出現しやすい状況ともいえます。

利回り4%以上、「脱炭素」関連の高配当利回り銘柄ランキング

 以下は、「脱炭素」に関連するとみられる銘柄の中で、配当利回りが4%以上ある銘柄のリストになります。株価の割安感が強いともいえるので、株価の下落リスクは相対的に低いとみられます。

 また、足元で関連銘柄が総じて上昇している中、高い配当利回り水準に放置されていることから、出遅れ感が強いともいえるでしょう。関連する分野のウエートは現在では小さく、「脱炭素」進展が業績全体に与えるインパクトは低いかもしれませんが、少なくても、関連銘柄の一つとして物色対象とされてくる局面は到来する可能性が高いと判断します。

「脱炭素」関連の高配当利回り銘柄(2020年12月14日時点)

コード 銘柄名 会社予想配当利回り 株価 時価総額 関連分野
1961 三機工業 5.90 1,184 708 省エネ
5857 アサヒHD 4.83 3,310 1,319 リサイクル
4208 宇部興産 4.71 1,910 2,028 電池材料
6369 トーヨーカネツ 4.67 2,142 200 水素
1888 若築建設 4.66 1,180 153 風力発電
7278 エクセディ 4.40 1,363 662 電気自動車
9832 オートバックス 4.30 1,395 1,173 電気自動車
配当利回り平均(%) 4.78
注:配当利回りの単位は%、時価総額の単位は億円、株価は2020年12月14日終値、単位は円。

選定要件

  1. 配当利回り4%以上
  2. 時価総額100億円以上

三機工業(1961)

▼ここがポイント

 独自の省エネルギー・創エネルギー技術として、木質バイオマスガス発電設備、低温熱をタンク内の潜熱蓄熱材に蓄熱して車両で運搬し利用先に熱供給するトランスヒートコンテナ、酸素移動効率を大幅に向上させた省エネルギータイプの散気装置「エアロストリップ」、大空間向け温度成層空調「ペリループ」などを手掛けています。

 また、高効率な省エネルギー設備を備えた建築物を指すZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の物件を2020年7月に竣工しており、省エネビルの建築ニーズの高まりでメリットが期待されます。

業績見通し

 2021年3月期上半期の営業利益は前年同期比84.2%減となっています。大型工事が端境期であった他、新型コロナウイルスの影響で小口・諸口工事が減収となり、前年同期に発生した好採算案件の一巡も減益要因になっています。

 ただ、半導体関係を中心とした産業空調の大型工事の獲得で受注はプラスを確保しており、最悪期は通過した印象です。2021年3月期通期では前期比15.7%減と減益率は縮小の見通しです。

アサヒHD(5857)

▼ここがポイント

 廃油や汚泥のリサイクル、廃木材のバイオマス発電燃料としての利用など、リサイクル事業を柱の一つとしています。結果的に二酸化炭素排出抑制につながるリサイクル市場は、「脱炭素」推進の中で広がっていくものと考えられます。

 また、廃棄物を焼却する際に発生する熱を利用し、高温・高圧の蒸気を作りタービンを回して発電する廃棄物発電を導入しています。発電量に相当するCO2を削減することができます。

業績見通し

 2021年3月期上半期の営業利益は118億円で前年同期比70.5%増益となっています。通期計画は210億円で前期比16.6%増ですが、高い進捗率からみても上振れ余地が大きいと考えられます。

 貴金属事業が好調で業績をけん引、国内・アジアの貴⾦属リサイクル事業分野、北⽶の精錬事業分野ともに業績は好調に推移しています。