2020年の日経平均は大幅上昇、29年ぶりの2万6,000円台回復へ
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12月14日現在ですが、2020年の日経平均株価は年初から13.0%の上昇となっています。新型コロナウイルス感染拡大を受けて、3月には年初から一時20.0%の下落となりましたが、その後は経済活動の緩やかな再開、世界各国の豊富な資金供給が支えとなって、急速に下げ渋りました。
11月に入って日経平均は一段高、2万4,000円レベルの上値抵抗線を突破して急伸し、1991年5月以来、29年ぶりに2万6,000円台を回復しました。
2020年最大のイベントとされたのは米大統領選ですが、結果的に、大統領選通過が不透明要因の払しょくにつながり、買い安心感が強まる形となりました。
バイデン氏の勝利は市場想定通りでしたが、当初警戒されていたキャピタルゲイン課税の引き上げや大手IT企業に対する規制強化への懸念は高まらず、むしろインフラ投資の拡大期待などが先行している印象です。
一方、ほぼ1年を通して新型コロナウイルスの感染拡大が市場の最大の関心事となりました。いまだに現在でも、感染者数の増加傾向に変化はありませんが、春先と違って経済活動を強く抑制しなかったことで、相場のマイナス要因にはなりにくくなりました。ワクチンの開発が各企業で進展していることも、安心感につながっています。
2020年は、新型コロナウイルス感染拡大によって、巣ごもり消費関連銘柄などが幅広く物色されました。また、生活様式の変化を映して、テレワーク関連銘柄なども大幅な水準訂正を果たしました。マスクやワクチン関連銘柄などに関心が集まる局面も見られました。
その他、安倍首相の突然の退任を受けて菅新総理が誕生しましたが、新政権の政策関連として「行政デジタル化」が浮上、ITサービス会社が幅広く買われました。年後半にかけては、バイデン氏の大統領決定で再生エネルギー関連に関心が向かい、その後はこうした「脱炭素」の流れが、電気自動車関連や水素関連にも波及しています。
半面、新型コロナウイルスの悪影響が大きくなっている観光業や小売業の一角などが下落率の上位となっています。
2021年の株式市場、一段高のハードルは高い見通し
3月安値から直近高値までの上昇率は64%に達しており、1年内の期間上昇率は安倍政権発足時の2012年末からの株価上昇時以来の水準となります。大幅な水準訂正を果たした直後だけに、2021年の日経平均の上値はやや重くなる可能性が高いでしょう。
現在のPER(株価収益率)水準は、2021年度の大幅な業績好転を十分に織り込んでおり、好業績が株価の上昇インパクトにはつながりにくいとみられます。
欧米では新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっており、副作用などもみられず順調な経済活動の回復につながっていけば、短期的な一段高につながる余地はあるでしょうが、その後は、潤沢なマネー供給ペースの鈍化も視野に入ります。
新型コロナウイルスのワクチンは、ここまでの株価上昇の最大の原動力となっていたものであり、そのモメンタムの変化が株価の変転も誘うことになる公算があるでしょう。
2021年の注目スケジュールとしては、1月初めに米上院議会の決選投票が行われます。
共和党が過半数確保なら、バイデン大統領の政策運営の厳しさが意識されるとみられる一方、民主党が過半数確保なら、キャピタルゲイン増税など市場にネガティブな政策の進展などが想定されてくる可能性もあります。後者の際には、あらためて環境関連銘柄の買い、大手IT企業の売りといった流れが想定されます。
7月23日からは東京オリンピックが開催予定です。一時的な特需などが発生する業態もあるとみられ、関連銘柄には期待感が高まる場面もあるでしょう。
9月後半にはドイツの総選挙が予定されており、メルケル首相の後継者に関心が集まるでしょう。
10月からは統合型リゾート施設についての申請受付がスタートする予定です。
日本株を見る上での注目ポイントは、コロナ収束後の菅政権の政策運営となるでしょう。中核としているのは「規制緩和」とみられ、これが明確に進展するようであれば、海外投資家の日本株買いが活発化する余地はあるとみられます。
その他、企業の就労に対する考え方、オフィスに対する考え方の変化がどう顕在化していくかなども注目されます。オフィス賃料低下を映して大手不動産会社などの中長期的なマイナス材料となっていくか、逆に、郊外での一戸建て住宅の需要増につながっていくか、などを見極めたいところです。
自動車生産の回復と比較して遅れている設備投資は2021年に入って本格化してくる可能性が高いとみます。
すそ野も広い「脱炭素」が2021年の最大の物色テーマに
世界各国が「脱炭素」に向けてかじを切っている中、菅首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と所信表明演説において示しました。脱炭素社会への取り組みに積極的なバイデン氏が米次期大統領に決定したことも、日本の対応が急がれる要因になっていると考えられます。
温室効果ガス排出抑制には、再生可能エネルギーの一段の普及が不可欠な他、次世代エネルギーとしての水素の活用、二酸化炭素を回収して活用するリサイクル技術の進展なども必要となってくるでしょう。また、ガソリン車から電気自動車や燃料電池自動車などへのシフトを早急に進める必要もあります。
「脱炭素」に関連する分野は数多く、関連銘柄も多く挙がることになります。循環物色が効きやすく、物色は長期化するものと考えられます。
とりわけ、電気自動車などはこれまでの民間企業の努力がようやく結実するタイミングにも入り、実際に業績面への寄与が早期に表面化しやすいことも物色の支援材料となるでしょう。
2021年1月からは中国でハイブリッド車の優遇が開始されますが、このように世界的に「脱炭素」を加速させるような動きも強まるとみられるので、折に触れて好材料が出現しやすい状況ともいえます。
利回り4%以上、「脱炭素」関連の高配当利回り銘柄ランキング
以下は、「脱炭素」に関連するとみられる銘柄の中で、配当利回りが4%以上ある銘柄のリストになります。株価の割安感が強いともいえるので、株価の下落リスクは相対的に低いとみられます。
また、足元で関連銘柄が総じて上昇している中、高い配当利回り水準に放置されていることから、出遅れ感が強いともいえるでしょう。関連する分野のウエートは現在では小さく、「脱炭素」進展が業績全体に与えるインパクトは低いかもしれませんが、少なくても、関連銘柄の一つとして物色対象とされてくる局面は到来する可能性が高いと判断します。
「脱炭素」関連の高配当利回り銘柄(2020年12月14日時点)
コード | 銘柄名 | 会社予想配当利回り | 株価 | 時価総額 | 関連分野 |
---|---|---|---|---|---|
1961 | 三機工業 | 5.90 | 1,184 | 708 | 省エネ |
5857 | アサヒHD | 4.83 | 3,310 | 1,319 | リサイクル |
4208 | 宇部興産 | 4.71 | 1,910 | 2,028 | 電池材料 |
6369 | トーヨーカネツ | 4.67 | 2,142 | 200 | 水素 |
1888 | 若築建設 | 4.66 | 1,180 | 153 | 風力発電 |
7278 | エクセディ | 4.40 | 1,363 | 662 | 電気自動車 |
9832 | オートバックス | 4.30 | 1,395 | 1,173 | 電気自動車 |
配当利回り平均(%) | 4.78 | ||||
注:配当利回りの単位は%、時価総額の単位は億円、株価は2020年12月14日終値、単位は円。 |
選定要件
- 配当利回り4%以上
- 時価総額100億円以上
三機工業(1961)
▼ここがポイント
独自の省エネルギー・創エネルギー技術として、木質バイオマスガス発電設備、低温熱をタンク内の潜熱蓄熱材に蓄熱して車両で運搬し利用先に熱供給するトランスヒートコンテナ、酸素移動効率を大幅に向上させた省エネルギータイプの散気装置「エアロストリップ」、大空間向け温度成層空調「ペリループ」などを手掛けています。
また、高効率な省エネルギー設備を備えた建築物を指すZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の物件を2020年7月に竣工しており、省エネビルの建築ニーズの高まりでメリットが期待されます。
▼業績見通し
2021年3月期上半期の営業利益は前年同期比84.2%減となっています。大型工事が端境期であった他、新型コロナウイルスの影響で小口・諸口工事が減収となり、前年同期に発生した好採算案件の一巡も減益要因になっています。
ただ、半導体関係を中心とした産業空調の大型工事の獲得で受注はプラスを確保しており、最悪期は通過した印象です。2021年3月期通期では前期比15.7%減と減益率は縮小の見通しです。
アサヒHD(5857)
▼ここがポイント
廃油や汚泥のリサイクル、廃木材のバイオマス発電燃料としての利用など、リサイクル事業を柱の一つとしています。結果的に二酸化炭素排出抑制につながるリサイクル市場は、「脱炭素」推進の中で広がっていくものと考えられます。
また、廃棄物を焼却する際に発生する熱を利用し、高温・高圧の蒸気を作りタービンを回して発電する廃棄物発電を導入しています。発電量に相当するCO2を削減することができます。
▼業績見通し
2021年3月期上半期の営業利益は118億円で前年同期比70.5%増益となっています。通期計画は210億円で前期比16.6%増ですが、高い進捗率からみても上振れ余地が大きいと考えられます。
貴金属事業が好調で業績をけん引、国内・アジアの貴⾦属リサイクル事業分野、北⽶の精錬事業分野ともに業績は好調に推移しています。
宇部興産(4208)
▼ここがポイント
リチウムイオン電池セパレータ(マクセルとの合弁会社で展開)では自動車用で世界シェア1割を握っており、また、独自の有機合成技術を用いた高純度溶剤、炭酸ジメチルなどをベースに電解質を混合したリチウムイオン電池用電解液も手掛けています。
こちらは、三菱ケミカルと2020年10月に新会社を設立しています。リチウムイオン電池の素材に関しては日本企業が強みを持っており、電気自動車の市場拡大に沿ったメリットが期待できるでしょう。
▼業績見通し
2021年3月期上半期営業利益は34.1億円で前年同期比79.6%減益となっています。ナイロン・ファインの販売価格下落の影響を中心とした化学セグメントの大幅減益が響きました。
ただ、第1四半期は6億円の赤字であったため、化学セグメントをはじめ、業績は当面の底を打ったものと考えられます。通期では215億円で前期比36.8%減益の見通しとなっています。
トーヨーカネツ(6369)
▼ここがポイント
本格的な水素社会の到来を先取りして、電力会社などでの利用が期待される大型水素貯蔵タンクの開発を、東京工業大学と協力して進めています。
現在の世界最大容量をはるかにしのぐ1万立法メートル級のタンク建設を目指しています。水素発電市場での大きなインフラとなってくる見通しです。
▼業績見通し
2021年3月期上半期営業利益は10.6億円で前年同期比43.2%増益となっています。機械・プラント事業において一部低採算案件の計上などもありましたが、物流ソリューション事業がプロジェクト管理強化などにより採算改善、収益をけん引しました。
上半期の受注高は大きく落ち込みましたが、受注残高は前年同期並みであり、通期では21.6億円で前期比16.7%減益見通しです。なお、ネット通販市場拡大により、物流ソリューション事業は今後堅調な推移が続くものとみられます。
若築建設(1888)
▼ここがポイント
これまでも洋上風力発電所向け工事の実績はありますが、12月には洋上風力発電事業への対応強化のため、新たに洋上風力開発室を設置しています。
再生エネルギーとして風力発電の市場拡大が期待されていますが、風力発電は一般的に風の状況が良い洋上に適しているとされています。海上土木会社である同社の風力発電市場への積極姿勢は今後注目されてくるものと考えます。
▼業績見通し
2021年3月期上半期営業損益は2億円の赤字で前年同期比27.7億円の損益悪化となっています。工事進捗の遅れなどもあって、土木・建築ともに売上高が大幅に減少し、福岡市のマンション建替えに関わる一過性の費用増なども影響しました。
新型コロナウイルスの影響による発注の遅れで受注も減少しており、2021年3月期通期でも、営業利益は前期比47.4%の大幅減益見通しです。
エクセディ(7278)
▼ここがポイント
電動化対応ダンパーなどを手掛けています。エンジンとモータの両方を動力として走行するパラレル走行時のこもり音を抑制する特徴があります。
電動化対応製品の他、産業用ドローンなど向けに小型ダイレクトモータも扱っています。ドローンの普及なども「脱炭素」推進にはかかせないものとみられます。その他、小型風力発電機なども共同開発しています。
▼業績見通し
2021年3月期上半期営業利益は13億円で前年同期比85.3%減益となっています。自動車生産台数の減少によって、日本、米国、アジアともに売上高が減少しています。
2021年3月期通期でも55億円、前期比67.2%減益の見通しですが、第3四半期決算時には従来の15億円から上方修正しています。中国をはじめ、各国での経済活動の再開によって緩やかに受注が回復しているようです。
オートバックスセブン(9832)
▼ここがポイント
電気自動車やプラグインハイブリッド自動車向けのインフラとして、電気自動車充電スタンドを103店舗(2019年10月現在)設置しています。市場拡大のための重要なインフラとして位置づけられる他、店舗での自動車用品購買の契機にもつながっていくとみられます。
また、バッテリーなどを整備するメンテナンス需要なども増加が見込まれ、体制構築も積極化しています。
▼業績見通し
2021年3月期上半期営業利益は35.8億円で前年同期比19.4%減益となっています。新型コロナの影響による4~5月の売上減少、消費増税前の前年9月特需の反動など悪影響が重なりました。
2021年3月期通期では76億円で前期比0.2%増と増益に転じる予想になっています。足元の既存店売上動向では、10月に入って回復基調が鮮明化しているので、達成の可能性も高いと考えられます。
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