フォルクスワーゲンショックから低迷が続くプラチナ

 プラチナは、2006-08年にかけて急騰しました。環境意識の高い欧州でディーゼル車の排ガス浄化装置にプラチナ需要が拡大したためです。

 プラチナは、排ガス浄化装置の触媒として使われます。触媒とは、自らは化学反応を起こさず、他の物質に化学反応を起こさせるものです。排ガス浄化装置内のハニカム状の構造物に塗布され、排ガスの有害物質を分解する働きを持ちます。触媒として、プラチナほどすぐれた貴金属はありません。長期間にわたって劣化しない、貴金属として最高の品質を持つからです。

 ところが、2015年10月に独フォルクスワーゲン(VW)問題が起こってから、欧州でのプラチナ需要は減少しました。この時、VWが排ガス検査データを偽造して、ディーゼル車の環境性能を高く偽装していた問題が発覚しました。その後、欧州では、ディーゼル車の人気が落ち込み、ガソリン車への需要シフトが起こりました。

 ところで、ガソリン車にも排ガス浄化装置はつけられます。ガソリン車では、高価で稀少なプラチナではなく、当時、プラチナより安価だったパラジウムを触媒として使いました。パラジウムの需要は、新興国でガソリン車の需要が拡大するにしたがって、継続的に拡大。需要が低迷するプラチナを尻目に、パラジウムの需要拡大、値上がりが続いた結果、ついに、パラジウム価格はプラチナを抜き、いまやプラチナの倍以上の価格となっています。

 触媒として完璧なプラチナを、パラジウムが逆転し、2倍以上の価格差がついているというのは、需給のなせる業とはいえ、おかしなことと考えています。