12月、2021年へ生かすべき教訓

 11月は大相場であったにもかかわらず、心の備えをしない相場参加では、首尾良く成功を勝ち取れなかった可能性が高い展開でした。踏まえておくべき教訓は次の3つです。

(1)2021年においても金融緩和の追い風を受け続ける相場の上昇基調を前提に、買い方を軸に投資を組み立てる局面が続いていること

(2)ローテーションなどかなり高い確度で想定される変化の前には、逆風に晒(さら)されそうな投資資産の保有を減らし、追い風を受ける資産に組み替えるなどの工夫で、きちんと対応すること

(3)投資家の行動に影響する確定した予定イベントを踏まえた相場の流れ・リズムについてのイメージを時間の経過とともに微調整していくこと

 今後の相場展開については、10月の本連載でご紹介した図5のイメージを大きな変更なく維持しています。2021年は金融相場の延長線上にあり、そこにワクチン普及による経済正常化への展望が重なる好相場を思い描いています(もちろん、ワクチンの不調などさまざまなリスクがあり得ます。相場の大局・中局の展望とリスクについては、後日改めて論じる予定です)。

 12月については、相場の余勢が上中旬まで続き、下旬には欧米休暇期に一服というリズムを基本イメージにしてきました。

 リスクは、足元の相場上昇が速まると、相場自らが内部に利益確定売りという自律反落の潜在圧力を生み出すことです。米株式の10月中旬の反落もこの種のものであり、同月上旬の速い上昇の結果として、米選挙日よりかなり早いタイミングで相場が自律反落になりました。12月もこの先相場が上がるほど、自律反落リスクへの注意を高める必要があります。

 15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)、18日のトリプルウィッチング(米株式の先物、指数および個別銘柄のオプションの3取引の生産が重なる日)などの揺さぶりを経て、クリスマス休暇週までどう永らえるかをチェックします。

 以上の11~12月の相場イメージを聞いて、大変過ぎてついていけないと感じる読者もいるでしょう。しかし、面倒な話はともかく、図5で描く相場イメージの肝は、2021年も投資の追い風は続き、短期で相場が下振れても無視するか、より良い買い場というほどに臨めば良いだろうということです。

 12月のリズム想定の通りに、相場が下旬に反落すれば、新年明けにかけてより良い買い場と判断できる条件があります。

 1月下旬には、米国で新政権がスタートし、新たな政策への期待で相場の高揚感も高まりやすくなるでしょう。米欧日の冬場の新型コロナ感染第3波も峠を越え、ワクチン接種も徐々に進みます。投資ローテーションも減退し、2021年1~3月にはグロースとバリューのバランス良い好相場がレールを走り出したと実感できるのではないか、そうイメージしています。相場を楽しみたい投資家には、このレールをより良く走りたいなら、今回論じた短期の相場リズムへの対応も工夫することをお勧めします。

図5:米株式相場の「小局~中局」イメージ

出所:田中泰輔リサーチ

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