11月に「想定内」だったこと

 以上、11月の歴史的大相場を投資家が享受できなかった理由は、(1)失地回復までの上昇だった、(2)ローテーションで虎の子資産のグロース株がもたついた、(3)ワクチン朗報による短期相場の振れに翻弄(ほんろう)されたことに要約されます。しかし、これらはどれも事前に想定された範囲の問題と言えます。

 筆者のトウシルでの動画とレポートでは、無理のない想定として繰り返し、以下の3点を強調してきました。

 第1は、金融相場第1波は終わったものの、FRBの不退転の政策措置を背景に、金融第2波へ移行することは、予想というより、政策当局の決意として実現するであろうことです。

 第2には、いずれワクチン開発が成功すれば、中期的な経済正常化への展望とともに、投資ローテーションが起こるであろうことでした。

 その際には、景気株・バリュー株の上昇は相対的に地味かもしれませんが、むしろ備えるべきは、短期的にはグロース株の反落リスク、次に中期的には優位と見込まれるグロース株の選別、としました。

 テーマ業種の中で最も攪(かく)乱を警戒すべきは、コロナ禍で直裁にテーマ性を強調された医療関連株、ローテーション下で狙い目はグロースと景気の両狙いとなる半導体株を取り上げて検討しました。

 図4で主要テーマ別の米株式ETF(上場投資信託)について11月の推移を比較しています。上位から、半導体に次いで、バリュー系の高配当、景気系の金融、資本財と続き、下位には医療系が位置する、ある意味、単純明快な序列になっています。

図4:米株式主要テーマ別ETFの推移(2020年11月)

出所:Refinitiv

 第3に、米選挙という大イベントが動かない以上、金融相場第2波を模索する株式市場は、9月の反落から復調し、10月には選挙に向けた高揚で上値を志向し、選挙が近づくと不確実を警戒して再反落、選挙後には持ち直すというリズムが順当には思い描けると、繰り返し述べました。もちろん、予言めいた話ではないし、予想と言うほどの強い意味もありません。

 ただ、そこに厳然と大イベントがある以上、まずその前後の相場推移のイメージを持って、現実の展開のズレを確認しながらイメージを補正し、相場に乗り続ける、そのための観測の軸にするものです。

 今回、実際の展開は、選挙前の相場の高揚は想定より2週ほど早く10月12日に終え、逆に選挙後とイメージした相場反発は投票日から弾みがつきました。基本リズムを踏まえていれば、投資スタンスの微調整で対応できる展開でした。