ドル安のもう一つの要因:日本の物価環境

 ドル安・円高のもう一つの要因があります。日米の物価上昇率の違いです。

 世界的に物価は低下傾向ですが、日米で比べると、米国は緩やかに低下していく中で、日本の物価は3カ月前からマイナスに転じました。

 日本の物価下落は実質金利を押し上げ、日米の比較では円高要因となります。つまり、日本の物価が米国以上に下がれば下がるほど、円高圧力が増すという構図です。

 そして、日本の物価下落スピードがここへきて速くなってきています。「Go Toトラベル」の影響で宿泊料が実質で大きく下がったことや、2019年10月の消費増税から1年経ち、物価上昇率を押し上げる効果が薄れたことが影響しています。

「Go Toトラベル」は来年2021年6月まで延長されるとのことであり、宿泊料の実質的な値下げは続きます。

 また、菅政権の肝入りで携帯電話の料金が来年2021年から下がりそうです。従って、2021年半ばにワクチン接種が行き渡り、新型コロナウイルスの感染が抑制されても、日本の物価環境は変わらない可能性がありそうです。

 ドル安構図の1と2は米国サイドの要因ですが、日米物価上昇率の違いは日本サイドからの影響が大きそうです。従って、来年に米国の政策が変更されドル安が反転しても、円安へ進むスピードが抑制されるというシナリオも十分に想定されます。

 以上のような、ドル安構図反転のシナリオは楽観的な見方かもしれませんが、一つのたたき台として活用してください。

 また、接種が始まったコロナワクチンの効用期間が短いとか、新型コロナウイルスが変異し(Covid-21)、猛威を振るうなど悲観シナリオを想定する際にも、たたき台として役に立ちます。