バフェットとESG投資

 前回見たように巨大コングロマリットであるバークシャー・ハサウェイ。その中に含まれる電力事業で、バフェット氏は風力発電などの再生可能エネルギーに巨額の投資を行っています。

「バフェットは、ESG投資に積極的」。果たしてそうでしょうか。

 バフェット氏はこともなげに言ってのけます。「税メリットがなければ、こんなこと(風力発電への投資)はやらないでしょう」

「社会的に影響力のある大企業として、社会にとって“良き行い”をすべきでは?」
このような指摘に対してバフェット氏は答えます。

「難しい話ですね。大企業20社をあげてごらんなさい。私にはその20社の企業活動のうち、どれが“ベストな行い”なのか判断できません。私は実際に20の上場企業で取締役を務めてきましたが、それぞれの企業がやっていることを評価するのは、とても、とても難しいことです。私はキャンディーが大好きですが、このキャンディーは私にとって“良いもの”ですか? 私には分かりません」

 バフェット氏は会社のお金はあくまでも株主のものであるという立場を崩しません。

「もしバークシャーの子会社の経営陣が世界にとって“良いこと”に投資をするならば、それは間違っている可能性すらあります。彼らはあくまでも株主の代理人に過ぎないからです。」

「多くの経営者が政府の税金の使い方を非難します。しかし、自分たちが株主のお金を使うことについてはひどく寛容です」

 バークシャーのグループ会社では会社の資金を使ってのチャリティ活動は一切禁止されているそうです。

 このような立場から、バフェット氏はさらに踏み込んだ発言もしています。

「もし、電力会社が持つ石炭火力発電所を止めようと思えば、私たちの株主か消費者のいずれかがそのコストを負担することになります。たまたま住んでいる地域によって、一部の消費者が高い電気料金を払うことになったとしたら、それは“良きこと”なのでしょうか。市場のシステムを変えるのは政府の仕事である(=コストは政府が負担する)べきです。」

 ESG的課題への対応のために、ときに企業に大きなコストが発生する場合があります。そのコストを投資家や消費者がもつべきではない、とバフェット氏ははっきりと言っています。