自らの「一喜一憂の心理」と「投資手法」を切り分ける

 では、どうしたらよいのでしょうか?

 それは、自らの「一喜一憂の心理」と、「投資手法」を切り分けることです。

 資産が減った時には、「このまま資産が減っていったら、どうしよう」「将来のための資金なのに、このままだと思い描いていた生活をしていけない」といった恐れが出てくるでしょう。

 恐れを含む一喜一憂の心理は、「高く買い、安く売る」を私たちにさせてきます。このため、恐れが出ているとしたら、持っている売りポジションをどうするかという運用のほうを考えるのではなく、まずはその恐れを取り除き、冷静な状態になることです。

 逆にいうと、恐れという一喜一憂が出ている状態においては、判断したり動いたりしないほうがよいと考えています。

 では、どうやって、一喜一憂を取り除くかですが、まずは自らが一喜一憂していることに気付き、横に置くことです。往々にして「恐れ」は将来に対するもので、恐れていることが今、起きている訳ではありません。

 そして、俯瞰(ふかん)した視点で、「投資手法」に焦点を当てることです。そもそも、売りポジションを持ったのは、何らかの手法をもとに、もしくは考えがあって持ったことと思います。その手法、考えに立ち返ることです。

 私の例でお伝えをしていきましょう。

 私の場合には、業績から見たときの「割安・割高」、投資家心理から見たときの「悲観・楽観」という2つの要因から、日経平均ETFを利用して、投資比率を段階的に変えていく(「割安」「悲観」になるほど買いポジション、「割高」「楽観」になるほど売りポジションを持つ)手法を用いています。そして、この手法は分析に基づきルール化して行っているので、一喜一憂せず、いかに淡々と行っていけるかが鍵となってきます。

 しかし実際のところ、一喜一憂しない訳ではなく、売りポジションを持っている状態で日経平均が大きく上昇した際には次のような思いが私の中にも起こってきます。

「日本銀行のETF買いさえなければ。日銀がこれほどの金融緩和をしなければ…」

 この思いは、「日銀のせい」という私の一喜一憂の1つの表れです。日銀は、私のことを考えてくれるわけではありません。このような一喜一憂が出てきたときには、すぐに切り分け、人のせいにしたことが自らの一喜一憂から発していることを認識し、横に置き、冷静な状態に戻るのです。