円高が進む中、日経平均が29年ぶり高値となった理由

 円高は、日本の景気・企業業績にマイナス影響を及ぼします。したがって、これまで、円高が進むと日経平均が売られ、円安が進むと日経平均が買われる相関関係が、かなり深く定着していました。

 ところが、先週は、円高が進む中、日経平均が急伸しました。これはかなり珍しいことです。私は、以下、2つの要因が円高下の日経平均上昇につながったと考えています。

【1】世界景気が回復に向かう期待が高まった

 4~6月が世界景気の底で、7~9月以降、世界景気の底打ちがはっきりしてきています。来年にかけて、さらに回復が加速する期待が出てきました。

 回復が一番早いのは、中国です。コロナ禍で中国景気が落ち込んだのは1~3月でした。4~6月から前年比でプラス成長に復帰し、7~9月は前年比4.9%増と回復が加速しています。その恩恵が日本の企業業績にも表れ始めています。トヨタ自動車は6日、今期(2021年3月期)の純利益見通しを、7,300億円(前期比▲64%)から1兆4,200億円(同▲30%)へ、6,900億円の上方修正をしました。中国をはじめ、世界で自動車販売が回復に向かっていることが貢献しました。

 中国に次いで米国景気も7~9月から回復に向かっています。米大統領選をめぐる混乱から米景気が失速する懸念もありますが、大統領選の結果がほぼ見えてきていることから、不透明感がやや低下しています。いずれ米議会はコロナ対策の財政追加を可決し、来年、ワクチンが利用可能になるまで、コロナ禍の回復が続くとの見方につながっています。

 大統領選前、共和党が提案していたコロナ対策財政追加を、民主党が受け入れなかったため、「対策の期限切れで米景気が失速する」不安が高まっていました。ただ、民主党が対策を受けいれなかったのは、「大統領選前に対策が決まると共和党トランプ大統領の手柄になる」と恐れていたからと考えられます。大統領選の結果がほぼ固まった今、コロナ対策の財政追加をかたくなに拒むことは民主党も共和党もできないと、私は予想しています。

 日本の景気・企業業績に円高はマイナス影響を及ぼしますが、円高以上に、日本に大きな影響を及ぼすのが米国景気・中国景気です。米中景気の回復が続くと見られるようになったことから、円高でも日経平均は上昇しやすくなったと考えられます。

【2】イベント(米大統領選)通過で、世界的に「リスク・オンの株高」が広がった

 大統領選前に、世界的に広がった「リスク・オフ」の巻き戻しが起こっています。大統領選がネガティブサプライズとならなかったことで、株の買い戻しが起こっています。その流れから、日経平均も買われました。

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