大統領選の勝者が株式市場にフレンドリーな演説をすれば「悪材料出尽くし」も

 最初に注目されるのは、当選者が最初に発する言葉です。バイデン氏が勝利してもトランプ氏が勝利しても、どちらとも、当選直後にNYダウが急落するのを見たくないのは当然です。

 選挙直後には、とりあえず、株式市場を喜ばせるような美しい言葉で飾ったメッセージを出す可能性があります。

 バイデン氏が勝利すると、法人増税をやるので株式市場は下落するとの懸念があります。民主党がGAFAなど大型ハイテク企業の分割や規制導入を検討していることも、株式市場にとって悪材料と見られています。

 バイデン氏は、当選した場合、そういう株式市場に嫌われる話を前面に押し出すことを避け、まずはコロナ対策の財政追加やインフラ投資、自由貿易の復活、経済再生を重視したコメントを出すのではないでしょうか。

 トランプ大統領が再選した場合も、すぐに株式市場に嫌がられる話はしないのではないでしょうか。トランプ大統領再選なら、米中対立が激化すると考えられていますが、すぐにはそれを前面に出さないと考えています。

 トランプ大統領は、中国通信大手ファーウェイなどへの制裁を強めるとともに、TikTokやウィーチャットなど中国アプリの使用禁止を強行する可能性があります。

 また、米中通商交渉で締結した「第一段階の合意」も、中国が約束を守らないことを理由に、反故にする可能性もあります。

 ただ、大統領選中に、こうした強硬策を打ち出すと株が暴落し、それが自身の再選に不利になると考えていたようです。

 トランプ大統領は、これまで「大統領選が終われば、中国とはもっと厳しく交渉する」という発言を繰り返してきました。選挙期間中は、対中強硬策をほのめかすだけで、実際に行うのは「寸止め」していたと考えられます。

 こうした経緯から、「トランプ大統領が再選したら米中対立が激化」がコンセンサスとなっています。ただし、今回トランプ氏が勝利した場合、当選直後から「対中強硬策」を強調した演説をするとは限りません。当選直後に株が暴落するのは、やはり見たくないと考えられるからです。

 当選直後は、「対中強硬策」は封印して、「コロナ克服・経済再生」を強調した演説をするのではないでしょうか。

 2016年の大統領選勝利宣言のように「世界中の国々と仲良く」のような美辞麗句を出すとは思われませんが、とりあえず、経済再生に全力を挙げることを強調する内容になると思われます。

 来年にかけて、実際に米国経済が回復し、株が上がっているのを見てから、対中強硬策の実行に移っていくのではないでしょうか。

 過去4年間、トランプ大統領は株が上がると対外強硬策を強め、株が下がると対外融和策を打ち出す傾向が強かったと言えます。

 株を見ながら、米国第一主義を機動的に調整していた印象があります。今後もそれは変わらないと思います。