当選後の演説で市場反応は変わる:2016年大統領選後のトランプ演説の例

 誰が大統領に勝利するかも重要ですが、それより重要なのは、勝利者が当選後に出すメッセージです。

 大統領選キャンペーンで言っていたことと、当選後の発言が一致しない大統領もいます。何が選挙戦のためのリップサービスで、何が本当の政策か、慎重にみきわめる必要があります。

 2016年の大統領選挙期間中、「トランプ氏が当選したら株は暴落する」とのコンセンサスが出来上がっていました。

 選挙戦で、過激発言「イスラム教徒の米国への入国禁止」、「メキシコとの国境に壁を建設」、「中国からの輸入品に45%の関税をかける」などを繰り返していたからです。

 そのため、トランプ当選を最初に織り込んだ2016年11月9日の東京市場で、日経平均は919円安の暴落となりました。

 ところが、日本時間で同日の午後5時くらいに伝わったトランプ氏の勝利宣言は、美しい言葉で飾られており、株式市場にフレンドリーな内容でした。

<2016年11月のトランプ氏「勝利宣言」抜粋>
【1】すべての共和党、民主党の党員に対して、米国の国民として団結することを訴えたい。
【2】すべての国と共通のグラウンドを持ち、良好な関係を築いていきたい。
【3】高速道路・橋・トンネル・空港・学校・病院といった社会インフラを再建する。インフラ再建で何百万人の雇用を生み出したい。

 分断をあおり、資本主義を破壊するイメージを持たれていたトランプ氏が、国内外の協調と経済成長を重視する演説をしたため、株式市場のムードは一変しました。

 11月9日の欧米株式市場は上昇し、それを受けて、11月10日の日経平均は1,092円高と急反発しました。その後、2016年11-12月はトランプ当選を歓迎する「トランプ・ラリー」と呼ばれる上昇相場となりました。

 2016年の大統領選直後にどういうことがあったか振り返ることは、今後起こることを考える上で重要な参考となります。以下、当時私が当時書いたレポートを参考としてください。

 2016年11月10日:3分でわかる!今日の投資戦略「NYダウ上昇、トランプ・ショック後の日経平均見通し」