債務の増加は社会のゆがみを大きくし、ネット人口の増加は社会の分断を深めている。

 ここでいう債務証券とは、発行主に償還義務がある有価証券のことです。具体的には国債や地方債、CP(コマーシャル・ペーパー)などです。米国の債務証券の膨張は、平たく言えば、“世界のリーダーの借金の膨張”です。

 金融工学が発達したことで、資金調達の仕組みが多様化しました。多様化した調達手段を駆使し、企業や個人は資金を調達し、経済活動を活発化させました。特に1990年代に、このような流れが世界経済の発展に大きく貢献したことは紛れもない事実とみられます。

 しかし、この資金調達手段の多様化は、低所得者への貸付を膨張させ、大規模な金融危機を発生させました(2008年のリーマンショック)。リーマンショック後の経済の立て直しには一役買ったものの、経済回復後も米国や複数の先進国の債務は、返すきっかけをうしなったかのように、膨張し続けています。そこに、新型コロナがひどく追い打ちをかけ、膨張に拍車がかかっています。

 金融工学の発達を機になされた人類の“ルビコン川の渡河”は、ある意味、社会のゆがみを大きくしたと言えます。そして足元、資金調達がなくてはならない状況が続いている以上、“後戻りできず、今後も借金の膨張は続く可能性があります。

 インターネット人口の急増は、2000年ごろから始まりました。デバイス(端末)が進化し、インフラ敷設が進み、今では世界の半分強の人が、インターネットができる何らかのデバイスを持っていると言われています。

 インターネットは、誰でもいつでも、どこでも、物理的に顔を合わせることなく、多数を相手に、情報の発信と受信を可能にします。場合によっては匿名でも、このようなことが可能です。このようなことができる人の数が、急増しているわけです。

 また、インターネットのユーザーの中には再生回数、PV(閲覧数)を増やすことで金銭的な欲求を満たすだけでなく、承認欲を満たす利用者もいます。このため、物理的に顔を合わせた者同士では起き得ない、感情をむき出しにした強い批判や否定をし合うことがあります。このような批判・否定の同調が起きた場合、世界的な負のブームが起こることがあります(2016年 英国のEU離脱をめぐる国民投票および米大統領選挙)。

 デバイスとインフラの発展を機になされた“ルビコン川の渡河”は、ある意味、社会の分断を深化させたと言えます。そして、人類が技術革新は正義と強く思い込んで止まない以上、“後戻りできず”、今後も分断は深まる可能性があります。