(8)リスクを取りたくないお金はMRFか個人向け国債に

「貯蓄から、投資へ」と政府や金融界が何十年も連呼しても、高齢者の金融資産の大きな部分は銀行預金にある。長期的な株価の動きなどを踏まえて結果から見ると、日本人大衆の運用感覚はなかなか立派なものだとも言えるし、リスクを好まないという態度及びこれに対応する資金があることも事実だ。

 但し、リスクを取りたくない資金について銀行預金が適切な置き場所かというと、そうではない。金融商品のセールスに関して銀行が警戒すべき相手だということ(前回拙稿をご参照下さい)を別としても、銀行の信用リスクの問題がある。

 バブルが崩壊して日本の銀行の多くが揺らいだものの、預金保険の「ペイオフ」はまだ実施されていないが、今後もそうだとは限らない。1,000万円を超えるお金の置き場所は重要な問題だ。

 また、中途解約の場合の精算を考えると理論的に預金が得な場合もありうるが、国債よりも信用度が劣るはずの日本の銀行の預金の利回りがどうして国債よりも低いのか。

 リスクを取りたくないお金はどこに置いておくといいのだろうか。

 筆者のお勧めは、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)と個人向け国債の10年物(変動金利)だ。

 前者は毎日お金の出し入れができるし、投資信託なので、財産が信託勘定に保管・管理されていて、窓口となった証券会社が倒産しても、財産は保護されている。また、投資対象は元本保証のある、もともと信用リスクの低い対象に、さらに分散投資されているから、一銀行の経営リスクの影響を大きく受ける銀行預金よりも安心だ。

 また、個人向け国債(10年物)は、これがベストと常に言えるようなものではないが、信用リスク面では銀行預金よりも優位にあり、且つ変動金利で将来の金利上昇リスクにも耐性があって、「無難」な運用対象だろう。解約の際に2回分の利払いがペナルティーとして必要であることは、金融商品自体の性質としては便利ではないが、10年間余計な金融商品の誘惑から逃れて資金を運用することができるのは、煩わしくなくていい場合もあるだろう。