(7)保険(特に医療保険)をなるべく使わない

 高齢になると相続対策やローンの際の条件で死亡保障の生命保険に加入することがあるかも知れないが、それ以外に死亡保障の生命保険に入ることは稀になるだろう。一方、医療保険の新規加入はまだあるかも知れない。

 しかし、端的に言って医療保険(癌保険などを含む)は止めた方がいい。健康保険に加入していれば、高額療養費制度である程度以上の医療費の出費はカバーされている。従って、ある程度の金融資産があれば医療費のニーズには対応できるし、市販の医療保険は、超高額の医療費には対応できないものがほとんどだ。また、細かいことだが、医療保険は入院日数をベースに支払額が決まるものが多いが、近年、厚生労働省の指導もあって、入院日数が短縮される傾向にある。

 加えて、医療保険の保険料は実際に掛かる医療費に対して非常に割高に設定されている。

 要は、医療保険に回すお金があれば自分で貯蓄や投資する方がずっと割がいい。

 死亡保障の保険についてアラウンド定年世代が注意すべきことは、「保険の見直し」などを名目とした、保険の乗り換え勧誘に乗らないことだろう。不要な特約を解約したり、契約を「払い済み」(過去の保険料支払い分に相当する保障に契約を縮小して保険料支払いを打ち切る)として保険を整理したりするのは構わないが、新規の保険に加入するのは大幅な損だ。多くの場合、契約当初の2年分程度の保険料が集中的に営業費見合いの付加保険料として徴収される。

 アラウンド定年世代が死亡保障の生命保険の処置を考える場合、(1)予定利率の高い契約(90年代初期の契約など)は維持した方が得、(2)高齢化して死亡確率が上昇しているので若い頃の契約を維持する方が得な場合がある、といったことは考慮してもいいが、保険を「新たに」契約することになると、付加保険料(保険料のうち保障にも貯蓄にも回らず保険会社の経費として費消される保険料)をたくさん取られてしまう。

 個人年金保険などと称する変額保険も基本的にはお勧めできない。運用商品として考えると、実質的には投資信託だが、手数料や解約の不便さの点で「投資信託に劣る投資信託」と考えておいていいだろう。

 この種の変額保険は高齢でも加入できるし、死亡時には保険金の形でお金を受け取ることになるので、相続税が心配なある程度以上のお金持ちが、変額保険を相続対策に使う(保険金控除枠を500万円使うために)方法があるようなのだが、それ以外には見所のない金融商品だ。

 保険は、貯蓄では対応できない巨額かつ予想できない支払いの必要性が発生するリスクに対応できる、優れた仕組みだが、根本的には、「顧客側が不利な賭け」であり(そうでなければ保険会社が潰れてしまう)、なるべく利用しない方が得なものだ。

 保険の損は年齢の高低を問わないが、高齢者も対象とした医療保険などが宣伝されているようでもあり、「保険はなるべく使わない」という心得を、アラウンド定年世代のために一項目掲げて置く。