(3)退職金が振り込まれた銀行では資産運用しない!
10個の原則のうちで、最も強調する必要性を感じるのはこの項目だ。
退職金が振り込まれたら、取引している銀行に相談したくなるかも知れないが、銀行は資産運用の相談相手には不適当だ。
理由は二つある。
まず、銀行は取引相手のこと、特に懐事情をあまりにも詳しく知りすぎている。収入も、借金の有無も、その気になればクレジット・カードの利用状況も分かるし、定期預金の満期も含めて、どのような形で幾らお金を持っているのかが把握できている。はっきり言って、これだけ情報を持たれている相手に本気でセールスされると、素人は自分のペースでものを考えることができないだろう。
証券会社が相手なら、全てのお金を預けているケースは少ないだろうから、「あいにく今は、お金がない」といった理由でセールスを断ることができるが、顧客の懐具合をよく知っている銀行の場合には、そうはいかない。
もう一つの理由は、端的にいって、銀行で扱っている運用商品(投資信託や個人年金保険など)には運用に適した商品がない。
投資信託などは、それそのものとしては運用に適したものがあるだろうが、銀行で扱っている投資信託は購入手数料も信託報酬も相対的に高いものがほとんどで、同様の商品を別の金融機関で購入するとほぼ必ず銀行窓口よりも安く買えるものがあるから、銀行の扱う運用商品はほとんど全て「運用に適していない」と言いたくなる。
市況の見通しが外れて損をするのは仕方がないが、商品選択の際に手数料が高い商品を選んでしまうような投資家が愚かであったために被る損は是非避けたいものだ。
(4)インカム・ゲインにこだわらない
退職後の資産運用というと、利息や配当、分配金などのインカム・ゲインを受け取ることを中心として組み立てるべきだというような先入観があるようだ。
高齢者相手には、古くは、たとえばかつての電力株のような相対的に配当利回りの高い株式を勧めたり、最近では、毎月分配型をはじめとする多分配型の投資信託などをセールスしたりすることが多いようだ。
しかし、配当や分配金しか見ずにいて、元本が大きく減っていた、というような事態は避けるべきだ。お金の運用に際しては、あくまでもインカム・ゲインとキャピタル・ゲインを合わせて損得を判断するべきであり、この原則は退職後のお金の運用でも変わらない。