(2)追加的な稼ぎに制約があることが唯一の特徴
退職後のお金の運用で唯一特徴的なのは、お金が足りなくなった場合に本人が稼いでこれに対応することができにくいことだ。言い換えると、退職者は相対的に「人的資本」が小さい。
とはいえ、個人差はあるが、高齢者も概して元気だし、働くことができる。ある程度(できればマイペースで)働いて稼ぐことを組み込んだリタイアメント・プランも十分考慮に値する。
ごく大雑把な数式だが、たとえば生きる年齢の上限を100歳に設定して、毎月使えるお金で表した生活水準を以下のように考えることができる。
以下の式の通りにお金を使っていると、100歳まで不足することなく、なだらかにお金を使うことができる。
(式1)老後の生活水準
細かな点まで考えると、遺産をいくらくらい残したいかということなども考慮する必要があるが(遺産を多く残したい人は「100」をもっと大きな数字にすると簡単だ)、あまり細かく考えても仕方がないだろう。
たとえば、70歳で3,600万円持っていて、年金が月額20万円貰える人は、100歳まで、全く働かずに毎月30万円使うことができる。これで不足なら、働いて稼ぐことを考えるのが第一の選択肢だろう。もちろん金融資産の運用が上手く行って、金融資産の額が増えたら生活水準を上げてもいいし、逆に金融資産が減った時にこれが生活水準に与える影響も分かる。
仮に、3,600万円が3割減ると、先ほどの計算式での生活水準は月額27万円になる。「これでは大変だ!」と思う人は、金融資産が3割減るかも知れないような運用はできないし、「何とかなるではないか」と思う人はリスクを取ってもいい。ちなみに、後半の原則で述べるような形で内外のインデックス・ファンドに3,600万円を全額投資していると、マイナス2標準偏差のイベントが起こった場合にこのくらいの損になる計算だ。